2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子夾雑下ヒストンアシル化による細胞機能制御を可能にする化学触媒システムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
18H04536
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山次 健三 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (30646807)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 触媒 / ヒストン / アシル化 / 細胞内反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
生命は生体分子と、分子夾雑下それらに介在する化学反応のネットワークから構成される。染色体タンパク質であるヒストンのリジン残基のアセチル化反応は重要な翻訳後修飾として生体内化学反応の代表であり、それによる遺伝子転写制御は重要な生体機能制御メカニズムである。生体はヒストンのアセチル化レベルをアセチル化および脱アセチル化を触媒する2つの酵素のバランスによって規定しており、酵素の不活性化によるヒストンアセチル化の減少は癌などの様々な疾患に、代謝経路を介したヒストンアセチル化およびアシル化の増加は疾患に対する抵抗性の獲得に、それぞれ関与することが示唆されている。従って、酵素が行うように、ヒストンアシル化を化学的に導入することが出来れば、新しい化学的な生体機能制御法・病態治療法になると期待されるが、現在そのような例は存在しない。これは、細胞内のような分子夾雑下において酵素非依存的に目的の化学反応を強力に進行させる化学が未熟であるからである。本研究では、生細胞内分子夾雑下で機能する人工化学触媒の論理的設計指針を見出すことによってヒストンのアシル化を酵素非依存的かつ強力に促進する人工化学触媒を開発し、それによる遺伝子転写を介した細胞機能制御という新機軸を世界に先駆けて確立することを目的とする。 これまでに、従来型の触媒DSHシステムを改善することによる細胞内タンパク質の選択的なアシル化反応の達成に成功している。また、DSHの速度論的解析を行うことで、分子夾雑下で強力に機能する触媒設計指針を見出すことに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来から開発してきた化学触媒DSHシステムを改善することにより、細胞内で標的タンパク質を選択的にアシル化することに成功した。さらにDSHの速度論的解析を行うことで、細胞内でアシル化反応を効率的に行うために必要な触媒設計指針を得ることに成功し、より強力な触媒骨格を見いだしつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
見いだした触媒設計指針に基づき、さまざまな触媒を実際に合成する。より強力な触媒系を見いだしたのち、生細胞内でのヒストンアシル化反応に適用し、化学触媒によるアシル化が遺伝子転写に及ぼす影響を評価する。
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