2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating of Nuage formation mechanism, a Drosophila cytoplasmic granule for germline piRNA biogenesis
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
18H04539
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 薫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20548507)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | piRNA / RNA顆粒 / Nuage / Vasa / トランスポゾン |
Outline of Annual Research Achievements |
piRNAは生殖組織特異的に産生される小分子RNAであり、生殖細胞においてトランスポゾンの発現抑制を行う。piRNAは、プライマリー経路とピンポン経路の2つの経路によって産生され、プライマリー経路によって産生されたpiRNAがピンポン経路を駆動することでピンポンpiRNAが産生されると考えられている。piRNA産生の必須因子(piRNA因子と呼ばれる)の多くはRNA結合モチーフをもち、細胞質において顆粒状の局在パターンを示す。特に、生殖細胞では、それらpiRNA因子が凝集し、非膜性の細胞質顆粒体Nuage(ヌアージュ)を形成することから、Nuageの形成がピンポンpiRNA産生に重要であることが示唆されている。 本研究では、カイコ生殖細胞(BmN4細胞)におけるNuage形成の分子機構を解析した。具体的には、ピンポン経路に重要なVasaと機能未知piRNA因子Maelに着目して研究を進めた。BmN4では、2つのPIWIタンパク質SiwiとBmAgo3が発現し、プライマリー経路によって産生されたSiwiのpiRNAがピンポンを駆動し、両者によってピンポンpiRNAが作られる。本研究では、BmN4細胞においてもBmMaelがピンポンpiRNA産生に必要であること、さらに、BmMaelがSiwiとプライマリーpiRNA産生に関わるBmSpn-Eと複合体を形成していることを明らかにした。さらに、Spn-EとVasaはそれぞれ異なるSub-type Nuageに局在することが知られているが、BmMaelがSpn-Eボディを形成するための足場として機能し、さらに、Spn-Eボディの形成がBmSpn-EとVasaを結び付け、ピンポン経路を駆動するうえで重要であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ピンポン経路に重要なVasaと機能未知piRNA因子Maelに着目し、BmN4細胞におけるNuage形成の分子機構に関して研究を進めた。BmN4では、2つのPIWIタンパク質SiwiとBmAgo3が発現し、プライマリー経路によって産生されたSiwiのpiRNAがピンポンを駆動し、両者によってピンポンpiRNAが産生される。VasaはSiwiによって切断したAgo3のpiRNA前駆体を剥がすことによってピンポン経路を促進する。一方、Maelはショウジョウバエの卵形成に必須の遺伝子として発見され、昆虫から哺乳動物まで広く保存されている。本研究で、まず、BmMaelノックダウン細胞におけるpiRNAレベルの変化を調べたところ、BmAgo3のpiRNAがほぼ産生されなくなることが分かった。Ago3のpiRNAはピンポン依存的に産生されることから、BmMaelがピンポンpiRNA産生に必要であることが示唆された。さらに、BmMaelに対するモノクローナル抗体を作成し、相互作用因子を単離したところ、SiwiとプライマリーpiRNA産生に関わるBmSpn-Eと複合体を形成していることが分かった。Spn-EとVasaはそれぞれ異なるSub-type Nuageに局在することが知られており、BmMaelノックダウン細胞では、BmSpn-Eの細胞質顆粒(Spn-Eボディ)が作られなくなった。さらに、BmSpn-EとVasaの相互作用がみられなくなることから、BmMaelはSpn-Eボディを形成するための足場として機能し、さらに、Spn-Eボディの形成がBmSpn-EとVasaを結び付け、ピンポン経路を駆動するうえで重要であることを見出した。これらの結果はNuage形成の仕組みと生物学的な意義をより深く理解するうえで重要な発見であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、BmMaelがSpn-Eボディを形成するための足場として機能し、さらに、Spn-Eボディの形成がBmSpn-EとVasaを結び付け、ピンポン経路を駆動するうえで重要であることを見出した。BmMaelは、核酸結合に機能するHMG-boxドメインと保存されたMAELドメインをもつ。Spn-Eボディ形成におけるBmMaelの分子機能をより詳細に明らかにするため、それぞれのドメイン機能に着目した解析を進めていく。具体的には、Siwi、Spn-E、BmMaelのそれぞれの相互作用ドメインについて免疫沈降法を用いた解析により同定する。さらに、BmMaelはSpn-Eボディの足場として機能することから、その顆粒形成に必要なドメインと作用機序を明らかにする。また、VasaはSpn-Eボディとは異なる細胞質顆粒を形成することが知られており(Vasaボディと呼ぶ)、その形成機構を明らかにする。CLIP法を用いて、Vasaに相互作用するRNAの配列解析とVasa変異体を用いた相互作用RNA、タンパク質の変動を解析する。また、精製Vasaを用いたin vitro顆粒形成実験と、RNAの添加による顆粒サイズや数の変化を解析し、顆粒形成におけるRNAの影響を明らかにする。さらに、それら相互作用分子をノックダウンした細胞におけるVasaボディ形成、Spn-Eボディ形成を解析し、Spn-EボディとVasaボディの細胞質顆粒間の相互作用機構を明らかにする。
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