2019 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法による分子夾雑系膜環境におけるG蛋白質共役型受容体の機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
18H04540
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 卓見 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (20451859)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | GPCR / NMR / DHA / ナノディスク / アデノシンA2A受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、脂質二重膜中のアデノシンA2受容体 (A2AAR)が複数の活性型構造の平衡状態にあり、脂質が各活性型構造の割合を変化させることを明らかにした。そこで、複数の活性型構造の違いを調べるために、観測原子の溶媒露出度を調べることが可能である、solvent PRE実験を行った。その結果、M232のNMRシグナルは、ドコサヘキサエン酸鎖 (DHA鎖) 存在下においてより大きく強度減少したのに対し、M106は、アラキドン酸鎖 (ARA鎖) 存在下の方がより大きく強度減少した。一方、M140, M211, M292の強度減少率は、脂質依存性を示さなかった。したがって、DHA鎖存在下では、M106およびM232の溶媒露出度がそれぞれ減少、上昇することが示された。 TM6が細胞内側からみて時計回りに回転すると、M232がキャビティ内に露出して、溶媒露出度が増大すると考えられる。実際、様々なGPCRの結晶構造における、M232に対応する残基の溶媒露出度とTM6の回転度を網羅的に調べた結果、両者はよく相関した。したがって、M232の溶媒露出度がDHA鎖により増大したことは、DHA鎖によりTM6が細胞内側から見て時計回りに回転することを示している。逆作動薬が結合した不活性型の結晶構造と、G蛋白質が結合した活性型の結晶構造を比較すると、活性型では、TM6の回転により、TM6の残基とG蛋白質のC末端の残基の相互作用が可能となっている。したがって、DHA鎖によるTM6の回転は、G蛋白質の活性化を容易にしていると考えた。 以上より、本研究では、A2AARには、シグナルを流さない不活性型構造と、異なる程度でシグナルを流す複数の活性型構造の多型があることを明らかにした。そして、薬剤は不活性型構造と活性型構造の存在比を変えることで、また脂質は複数の活性型構造の存在比を変化させることで、シグナル伝達活性を制御することも明らかにした。この研究成果を、投稿論文に発表した (Mizumura et al. Sci. Adv. 2020)。
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Research Progress Status |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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