2018 Fiscal Year Annual Research Report
Artificial regulation of selective protein degradation in cellular crowding systems
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
18H04544
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
伊野部 智由 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (50568855)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 細胞内蛋白質分解 / ユビキチン / プロテアソーム / 分子夾雑 / Unstructured領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの疾患の発症には、特定蛋白質の分解異常が関わっている。この特定蛋白質の分解を人工的に制御することができれば、新しい治療法の開発につながるはずである。我々は、細胞内の蛋白質分解を担うユビキチン-プロテアソーム分解系において、効率的な分解には、標的蛋白質のポリユビキチン化だけでは不十分で、標的蛋白質自身にフラフラとしたUnstructured領域が必要であることを明らかにした。このことはUnstructured領域のプロテアソームへのアクセスを制御すれば、分解を制御できることを示している。そこで我々は有機化学的手法や小型抗体などを利用して、細胞内夾雑系においても、特定の標的蛋白質の特異的分解制御(分解誘導と分解抑制)を可能とする以下の技術の開発を試みた。 Unstructured領域の認識阻害による新規分解抑制方法の開発を試みた。既に確立している細胞内でも働くことができる小型抗体を用い、Unstructured領域に抗原配列をもつモデル蛋白質の分解を阻害できることを確かめた。次に実際のガンで分解が亢進するNKX3.1を対象に、そのC末端の分解誘導性Unstructured領域に対する小型抗体を、無細胞ディスプレイ技術を用いて還元的環境で取得した。取得した抗体は細胞内において確かにNKX3.1の分解誘導性Unstructured領域をもつ蛋白質の分解を抑えた。 分解誘導性Unstructured領域ペプチドの標的蛋白質への選択的ケミカルラベリングにより、分解を誘導できるか検証した。まずはSpy-tag/Spy-catcherシステムを用いて、夾雑環境でもモデル蛋白質(Spy-catcher)に、Spy-tagを融合したUnstructured領域ペプチドを付加できることを確認した。現在モデル蛋白質が付加Unstructured領域依存的に分解されるか調べている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. Unstructured領域の認識阻害による新規分解抑制方法の開発 In vitroでの実験において、既に確立している小型抗体がUnstructured領域に抗原配列をもつモデル蛋白質の分解を阻害することを確認できた。現在、この小型抗体が培養細胞内の夾雑環境でも分解を抑制することができるか調べている。同時に実際のガンで分解が亢進するNKX3.1を対象に、そのC末端の分解誘導性Unstructured領域に対する小型抗体を、無細胞ディスプレイ技術を用いて還元的環境で取得した。取得した抗体は細胞内において確かにNKX3.1の分解誘導性Unstructured領域をもつ蛋白質の分解を抑えた。 Unstructured領域由来ペプチドが競合的に基質蛋白質の分解を阻害することを既に酵母内で確認している。同じペプチドがほ乳類由来の培養細胞内でも分解を阻害するか調べたところ、明確な分解阻害を示さなかった。しかしながら細胞に対する毒性を示したことから、UPSに対して何らかの影響を及ぼしていると考えられる。 2. Unstructured領域認識促進による新規分解誘導方法の開発 分解誘導性Unstructured領域ペプチドの標的蛋白質への選択的ケミカルラベリングにより、分解を誘導できるか検証を行った。まずはSpy-tag/Spy-catcherシステムを用いて、夾雑環境でもモデル蛋白質(Spy-catcher)に、Spy-tagを融合したUnstructured領域ペプチドを付加できることを確認した。しかしながら現在のところモデル蛋白質が付加Unstructured領域依存的にプロテアソームにより分解されるか不明である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. Unstructured領域の認識阻害による新規分解抑制方法の開発 モデル蛋白質およびNKX3.1に対し、小型抗体が細胞内夾雑環境でも分解を阻害することができるか、網羅的かつ定量的にしめす。 2. Unstructured領域認識促進による新規分解誘導方法の開発 Spy-tag/Spy-catcherシステムを用いた実験系により、細胞内夾雑環境でもUnstructured領域ペプチドの付加が分解を誘導するか検討する。 3. 蛋白質分解異常に起因する病気の新規治療法開発 昨年度ファージディスプレイを用いた病因蛋白質分解制御分子の開発の予備実験を行ったが思わしい結果が得られなかった。そこでユビキチン鎖を取り付けた蛍光蛋白質や酵母代謝関係酵素を分解基質蛋白質として用いた遺伝学的スクリーニング系を確立し、強力な分解誘導作用のあるUnstructured領域のアミノ酸配列を明らかにする。この配列のペプチドを項目2の分解誘導ペプチドとして標的蛋白質に付加すれば、分解誘導が可能になると思われる。またこのアミノ酸配列をベースにした安定化ペプチドはプロテアソームによる分解を阻害する可能性がある。
|
Research Products
(6 results)