2018 Fiscal Year Annual Research Report
トップダウンプロテオミクスによる分子夾雑環境におけるタンパク質分子の構造解析
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
18H04559
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
武森 信暁 愛媛大学, 学術支援センター, 講師 (40533047)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トップダウンプロテオミクス / ゲル電気泳動 / ネイティブ質量分析 / タンパク質複合体 / プロテオフォーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が独自に開発したゲルベースのトップダウン質量分析法と絶対定量プロテオミクスの手法を組み合わせ、タンパク質の高次構造情報・修飾情報・定量情報を包括的に取得するための新たなトップダウンプロテオミクスの手法を開発し、従来困難であった分子夾雑環境における微量標的タンパク質成分の革新的構造解析手法を創出する。
本年度前半は、トップダウンプロテオミクス解析のための試料前処理法として、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で分離したタンパク質成分をインタクトの状態で高効率かつ迅速に回収する新規受動抽出法を新たに開発した。またPAGEと逆相HPLCによる分離を組み合わせたタンパク質試料の多次元分離システムを構築し、高感度なトップダウンプロテオミクス解析法を確立することに成功している。小麦胚芽から抽出したタンパク質成分を解析対象として、確立した手法を用いた高深度プロテオーム解析を行った結果、 6.7-36.5 kDaの分子量域から177種類のタンパク質成分に関する詳細なプロテオフォームを検出することに成功している。
本年度後半は、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(ネイティブPAGE)とネイティブ質量分析を組み合わせたタンパク質複合体の新規構造解析法の開発に取り組んだ。ヘモグロビンなどの標準タンパク質複合体試料を用いて、(1)泳動後のタンパク質回収条件の検討、(2)回収したタンパク質複合体のネイティブ質量分析条件の検討、さらに(3)複合体のフラグメント条件を検討し、ネイティブPAGE/ネイティブ質量分析による微量タンパク質複合体構造解析法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、PAGEとLCを組み合わせた多次元トップダウンプロテオーム解析基盤の確立に成功しており、現在はモデル生物試料を用いて解析基盤の性能評価を行っている。またネイティブPAGEで分離したタンパク質複合体の構造を解析するための新たな前処理手法として、ネイティブPAGEゲル内のタンパク質複合体の迅速回収ワークフローを新たに開発した。領域の海外派遣助成により、回収したタンパク質試料を米国UCLAの高分解能FT-ICR質量分析装置を用いて自ら測定することにより、質量分析を用いたタンパク質構造解析における開発手法の有効性を検証した。現在は生体試料中の標的タンパク質の構造解析に向けて、キャピラリー電気泳動による追加分離条件の検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
トップダウンプロテオミクス:無細胞タンパク質合成技術を活用し、定量トップダウンプロテオミクスのための高品質な内部標準の合成法を開発する。さらに濃度既知の内部標準タンパク質と平成30年度に構築したトップダウンプロテオミクス解析システムを組み合わせ、標的タンパク質の絶対定量解析法を開発する。
タンパク質複合体のネイティブ質量分析:ネイティブIEFとネイティブPAGEを組み合わせた高分解能二次元分離法を活用し、生体試料中の微量タンパク質複合体のネイティブ質量分析による構造解析に挑戦する。
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