2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子夾雑環境におけるタンパク質の金属イオン獲得メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
18H04564
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
古川 良明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40415287)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 金属タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SOD1)は、銅イオンと亜鉛イオンを結合し、活性酸素の一種であるスーパーオキシドを除去する活性を有した酵素である。酸素呼吸が可能なほぼ全ての生物はSOD1を有しており、ヒトにおいても、SOD1活性の低下は様々な加齢性疾患を発症させることが提案されている。酸素呼吸を行うバクテリア(グラム陰性菌)は、ペリプラズム空間にSOD1(バクテリアではSodCと呼ばれる)を局在させることで、好中球によって貪食・殺菌を受ける際に発せられるスーパーオキサイドからバクテリアを保護していると考えられている。実際、病原性サルモネラ菌のペリプラズム空間には二種類のSodCが存在し(SodC-I, SodC-II)、SodC-Iを欠損したサルモネラ菌は好中球によって殺菌されやすくなり、病原性は低下することが知られている。一方で、SodC-IIを欠損させても、サルモネラ菌の病原性には変化が見られず、その役割は未だ明らかとなっていない。嫌気条件ではSodC-IIの発現は見られなくなることから、SodC-IIの役割は酸素分子に関連しているとも考えられるものの、SodC-IIを欠損させても、好気条件におけるバクテリアの増殖や生存率は影響を受けないことが報告されている。そこで、酸素呼吸を行うグラム陰性菌のモデルとして大腸菌を用い、SodC-IIが活性化するためには銅イオンが必要である点に着目することで、SodC-IIの生理的役割を検討した。その結果、活性型のSodC-IIは、酸素呼吸の過程において、電子伝達系から漏れ出た電子によって酸素分子が還元されて生じるスーパーオキシドを除去することで、大腸菌をその毒性から保護しているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞内に存在する全タンパク質のうち、およそ3割は金属イオン(Fe, Cu, Znなど)を活性中心として結合することで、電子伝達や様々な酵素機能を発揮している。実際、金属イオンを結合できなければ、金属タンパク質は適切な生理機能を発揮できず、様々な疾患を発症させることも知られている。タンパク質への金属イオン結合は生命現象を維持する上で非常に重要な反応であるにもかかわらず、その細胞内制御に関する詳細なメカニズムについては未だ多くの点が明らかとなっていない。平成30年度には、大腸菌をモデルにすることで、分子夾雑な細胞内環境における銅イオンの運搬・供給メカニズムに関する検討を進めた。特に、ペリプラズム空間において主要な銅タンパク質であるSodCへの銅イオン供給・酵素活性化を制御する因子について研究を行い、夾雑環境におけるSodCの銅イオン獲得メカニズムに関して知見を得ることができた。よって、本研究課題に関する現在までの進捗状況は概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに引き続き、ペリプラズム空間において最も主要な金属結合タンパク質である銅・亜鉛スーパーオキシドディスムターゼ(SodC)に着目し、細胞夾雑環境であってもSodCに銅イオンを供給することができるペリプラズム内因子の同定を進める。
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Research Products
(18 results)