2018 Fiscal Year Annual Research Report
分子夾雑が引き起こす生命システム動態転移の構成的な理解
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Approaches for Miscellaneous / Crowding Live Systems |
Project/Area Number |
18H04565
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤原 慶 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (20580989)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 高分子混雑 / 細胞サイズ空間 / 細胞再構成 / 無細胞転写翻訳系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は分子夾雑と生命システム動態の関係を通し、生命システムの制御における分子夾雑の生理的意義に迫るものである。そのため、試験管内再構成した①解糖系と転写翻訳系のカップリング系と②細胞分裂面決定系を材料に、分子夾雑が生命システムの動態を変化させるメカニズムを明らかにすることを目的とした。 上記の大目的のために、再構成された解糖系と転写翻訳系が混合により機能しなくなる理由の解明と、より夾雑度合が高く解糖系と転写翻訳系が協調して働く細胞抽出液系との差が存在する理由の解明を目指した。また、バクテリアの細胞分裂面決定システム(Minシステム)が、人工細胞内では夾雑による不均一性によってはじめて細胞分裂面を決定する波(Min波)が出現する理由を解明し、分子夾雑と細胞分裂面決定の関係を解明することを目指した。両研究はパラレルに行った。 夾雑度合によって解糖系と転写翻訳系のカップリング動態が変化する機構の解明:再構成された解糖系と転写翻訳系の共役系が機能しない要因に関して、基質低分子の濃度を指標に解析し、一部の基質の枯渇が主要な要因であることを見出した。この際、基質濃度が正規分布とは異なった挙動で確率的な変化を与えることが明らかになった。この事実に気付くのに時間がかかり、系の安定化に時間を要したものの、基質濃度が共役の挙動を非線形的に変化させることを見出した。 夾雑による細胞質や脂質膜の不均一性がMinシステムの波状運動を生む機構の解明:細胞分裂面決定機構に関しては細胞サイズ空間における膜吸着への平衡偏りが膜と生命システムの夾雑により創発される要因であることを示した。さらに、高分子混雑試薬の介在が膜吸着をキャンセルし、細胞分裂面を決定するMin波を発生させていることを示すに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標として掲げた、解糖系と転写翻訳系を共役させるための条件を見出したこと、Minシステムが創発する波が細胞サイズ空間中では夾雑因子を必要とする理由を明らかにしたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
解糖系と転写翻訳系のカップリング動態に関しては、基質濃度のもたらす非線形的な動態を解明するために、生化学反応シミュレーションを組み解析する。同時に実験によりシミュレーションの妥当性に関して検証する。これらの結果を合わせて、分子夾雑の効果を導く。Minシステムに関しては、膜吸着のキャンセル効果について、細胞抽出液を用いることで不偏性と特殊性を検証する。また、転写翻訳により要素タンパク質が合成された場合の振る舞いを解析する。
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