2018 Fiscal Year Annual Research Report
初代銀河と共存する初代星の形成メカニズムの理論的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
18H04570
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
矢島 秀伸 筑波大学, 計算科学研究センター, 准教授 (10756357)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 初代星 / 銀河形成 / 重元素 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
高精度な宇宙論的輻射流体シミュレーションにより、初代星ミニハローから初代銀河形成までを直接計算する事に成功した。初代銀河は、初代星ミニハローが100個程度集積しながら形成する。その過程を理解するためには、初代星からの紫外線フィードバックや、超新星爆発による周囲への重元素汚染を考慮した高精度な輻射流体計算が必要となる。我々は、SPH法に基づいたGadget-3コードに対して、新たに電離フィードバックやダストへの輻射圧の実装を行った。この最新の計算コードと大規模な並列計算により、初代銀河の形成過程を明らかにした。結果として、初代星の超新星爆発による重元素汚染により、初代銀河内の星形成は赤方偏移12程度で種族IIIから種族IIへと遷移する事が分かった。超新星爆発によってミニハローから排出されたガスは、2億年程度銀河間空間を浮遊後、約半分程度が初代銀河に降着する。これらの計算に加え、初代星の初期質量関数を変えた計算も行い、初期質量関数の初代銀河形成への影響を調べた。その結果、初代銀河内の星形成率は初代星の初期質量関数に大きく影響を受けることが分かった。対不安定型超新星爆発が高頻度で起きる初期質量を用いた場合、その大きな爆発エネルギーによって多くのガスが早い速度で吹き飛び、その後に形成される初代銀河にそのほとんどが降着しないことが分かった。これにより、初代銀河内はガス欠状態になり、星形成は大きく抑制される事が分かった。我々は、これらの結果について国内外の多くの会議で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題である初代星形成について統計的に理解するためには、計算コードの改良と大規模な数値シミュレーションが必要不可欠である。我々は当初予定した通りに計算コードの改良を終え、宇宙論的輻射流体シミュレーションも成功させた。その結果、初代星ミニハローから初代銀河へと成長していく過程において、種族IIIから種族IIへと遷移する物理メカニズムを明らかにした。また、初代星のある領域内での星形成率を、シミュレーションによって定量的に見積もる事に成功した。一方、計算を行った領域は計5つ程度で、その領域内に初代星ミニハローは数百個含まれているものの、統計的な理解を深めるためにはまだサンプル数が足りない。今後シミュレーションを精力的にすすめ、サンプルを増やし統計量を増やすことで、宇宙全体の初代星の星形成率密度を求める。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの数値シミュレーションにより、大規模構造の五カ所の領域に関しては初代星ミニハロー内の初代星形成、その後の初代銀河形成までを明らかにすることが出来た。今後の研究により、領域サンプルを100程度まで増やし、統計的な研究を行う。最終的に、大規模構造内での初代星星形成率密度を直接計算する。その後、これらのモデルを元に初代星連星を起源とする重力波源の数密度をモデル化する。そして、今後の重力波観測に向けて理論モデルを提供する予定である。
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