2018 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール連星の起源の解明に向けた統計的手法の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
18H04572
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大栗 真宗 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (60598572)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / 大規模構造 / 重力レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は連星ブラックホール合体重力波の赤方偏移分布への重力レンズ効果の影響について詳しく調査した。連星ブラックホール合体は電磁波放射を伴わないないし非常に弱いことが期待されており、また重力波観測の角度分解能もそれほどよくはないため母銀河の同定は困難であり、従って赤方偏移は直接観測できず光度距離の観測から赤方偏移を間接的に推定することとなるがその光度距離の見積もりに際して重力レンズ増光の影響を直接的に受ける。重力レンズ効果が強い場合、重力波の複数像が観測されるが上記の理由によりその複数像を同定することも難しく、従ってこれらの複数像は別個のイベントとして観測されるだろう。この状況のもとに重力レンズ効果を取り入れた赤方偏移分布の計算を行った結果、高赤方偏移での分布で重力レンズの効果が極めて著しいことがわかった。具体的には、重力レンズで減光された低赤方偏移の複数像の一つが重力レンズ効果で見かけ上高赤方偏移のイベントとして観測されるがこのようなケースが卓越することが判明した。高赤方偏移での重力波分布は連星ブラックホールの起源を探る上で鍵となると考えられていたが、今回の研究により重力レンズ効果を正しく取り入れることが観測される分布を解釈する上で極めて重要なことがわかった。またこの他の研究として、上記の計算で必要となる重力レンズ増光率確率分布についての基礎的な研究を行い、いくつかの新しい知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の予定以上に進行しており、最初の結果についてははやくもMNRAS誌にすでに成果を出版することができた。またその他の研究成果についても現在論文をいくつか投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き重力レンズ増光確率分布の重力波観測の影響について調べ、また重力波源と銀河分布の相関の研究についても順次すすめていく。
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