2018 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamical tides in massive star binaries
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
18H04573
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樫山 和己 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10785744)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ブラックホール / 大質量星の進化 / 超新星爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
advanced LIGOらによって発見された太陽の数10倍の質量をもつ連星ブラックホールがどのようにして形成されたかは大きな謎である。本研究課題ではその謎解明を目指し、連星ブラックホールの元となる近接大質量星連星の進化と、その最終段階で発生する重力崩壊とブラックホール形成過程に着目、それらに付随する突発天体現象の理論計算を行い、多波長突発天体サーベイを用いた観測戦略を提案している。
平成30年度は特に、低金属量の近接大質量連星系で起こるブラックホール形成に付随する電波放射の理論モデルに取り組んだ。このような系では動的潮汐相互作用を介した角運動量輸送が重要になる。我々はこの効果を取り入れた場合の重力崩壊時の大質量星の角運動量分布を計算、生まれたてのブラックホールの周りに太陽質量の0.1倍程度の降着円盤が形成されることを示した。このような降着円盤からは光速の10%程度の速度のアウトフローが発生する。我々はこのアウトフローが星間空間で減速する際に発生するアフターグロー放射、特に電波トランジェントを計算し、観測可能性を議論した。このような電波アフターグロー放射はVLAやALMAなどの電波、サブミリ波望遠鏡を用いることで、地球から数100 Mpcの距離まで検出可能であることを示した。上記の成果をまとめた論文がMonthly Notice Royal Astronomical Societyから出版された(Kashiyama, Hotokezaka, Murase 2018)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の2本の柱は、(i)近接大質量連星系における動的潮汐相互作用の理論モデルの構築、(ii)近接大質量連星系におけるブラックホール形成に付随する突発天体現象の理論モデルの構築、である。(i)に関しては大質量星の進化計算コードに動的潮汐相互作用起源の角運動量の注入を組み込むための準備を進めている。連星系の質量、連星間距離、年齢ごとに動的相互作用によって励起されるgravity modeの伝搬と散逸を計算するためのコードまでは完成している。(ii)に関してはKahsiyama+2018にこれまでの成果をまとめた。また、その発展系の研究として連星ブラックホールの親星システムの金属量を変化させた場合にアウトフローの性質やその観測的性質にどのような変化が生まれるかを明らかにするプロジェクトをスタートさせた。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、当初の研究計画に則り、動的潮汐相互作用の効果を取り入れた近接大質量連星進化計算コードを完成させる。完成したコードを用いて連星系の質量、連星間距離、年齢などの違いによって最終的に形成されるブラックホールの質量、スピンがどのように影響を受けるかを計算、結果をまとめ論文を出版する。また、ブラックホール形成時のトランジェント天体の理論計算も継続して進める。特に、回転が比較的遅い親星からブラックホールが形成される時に期待される弱いアウトフローに着目する。そのようなアウトフローが星間空間に突入した際に発生される衝撃波のダイナミクスとそこからの放射を計算するための輻射輸送計算コードが完成済みである。このコードを用いてブラックホール形成時のトランジェント天体をより系統的に調べ、結果をまとめた論文を出版する。
|
Research Products
(15 results)