2018 Fiscal Year Annual Research Report
Impact of correlated magnetic noise in the data analysis of gravitational waves and development of its mitigation and subtraction method
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
18H04591
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
姫本 宣朗 日本大学, 生産工学部, 准教授 (40552352)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / データ解析 / 背景重力波 / シューマン共鳴 / 大域磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、史上初の重力波の直接検出に成功した米国の重力波検出器LIGOのみならず、世界各地の重力波検出器による観測計画が遂行中であることからも、今後はグローバルなデータ解析が積極的に行われ、より精度の高い重力波観測が期待される。本研究の目的は、複数台の重力波検出器から得られる観測データの相関解析を行う際に、深刻な影響を及ぼすことが考えられる相関ノイズに対して、その原因となる大域磁場や、また大域磁場と検出器との間のカップリングについて本質的な理解に努め、そこから得られる知見に基づいて、相関ノイズを低減するためのデータ解析の手法を開発することである 平成30年度は、現実的な状況を考慮に入れた大域磁場に対する相関ノイズの影響の解明するために、NASAから提供されている年間落雷空間分布データに基づいて、非等方大域磁場のパワースペクトルのモデルを構築し、それによる相関ノイズが背景重力波検出に与える影響について評価を行った。その結果、日本の重力波検出器KAGRAとイタリアにあるVirgoとの間の相関ノイズは、大域磁場の非等方性に対して不感であり、このペアが背景重力波検出に向いている可能性を示すことができた。さらに、修正重力理論や余剰次元理論にも対応できるように、テンソル以外の偏極モードが存在する重力波の場合についても、上記と同様の評価を行った。現在これらの結果をまとめた論文を執筆中である。また大域磁場に対する重力波検出器の応答特性に対する理論モデルの構築のために、本研究領域に属しているKAGARAメンバーに実証実験の必要性を説くなどの積極的な議論も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、各重力波検出器から得られるデータに対して相関解析を行う際に、深刻な問題となりうる相関ノイズの影響を低減する方法の開発を目指すことである。平成30年度の計画では、大域磁場について現実的な状況を考慮に入れた場合の相関ノイズが、重力波検出に与える影響を定量的に評価し、相関ノイズの影響を決める本質的な原因を明らかにすることであった。この点については、現実的な状況を反映した大域磁場について、NASAから提供されている雷分布のデータに関連づいた空間的非等方性を仮定した大域磁場のパワースペクトルをモデル化し、その非等方性が重力波検出に与える影響を見積もり、相関ノイズの本質について定性的な理解を深めることができた。また、一般相対論を拡張した修正重力理論に含まれるテンソル以外の偏極モードを含む重力波検出の場合についても相関ノイズが与える影響について考察を行った。これらのことは現在論文にまとめているところである。一方、スプライトやQバースト呼ばれる突発的な強い雷によって生成される短時間だけ持続する振幅の大きい過渡磁場が、重力波検出器に与える影響については現在計算途中である。以上のことからも計画していた平成30年度の研究内容はほぼ完遂しており概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、大域磁場に対する重力波検出器の応答特性の理論モデルの構築、ならびに相関ノイズの低減方法の開発を行っていく。これまでにも、ウィーナーフィルタを用いたノイズ相関の低減・除去について研究がされてきたが、検出器と大域磁場とのカップリング(応答関数・応答ベクトル)が正確に考慮されていないなど、完全ではなかった。実際に、大域的に存在する磁場が、検出器内の鏡などに制御用として取り付けられている磁石とどのようなカップリングをし、また実効的にどのような鏡間のストレインを生み出すのかを決定(応答ベクトルの決定)するためには、検出器そのものを用いた実証実験に基づいて、大域磁場に対する重力波検出器の応答特性のモデル化を行っていくことが必要になる。そこでまずは、KAGRAの大域磁場に対する応答特性のモデル化に努める。そして、そこで得られた知見を発展させ、LIGO、Virgoなど世界に点在する重力波検出器ついても応用していき、グローバルな重力波検出の相関データ解析に貢献できるように、ノイズ相関の低減方法について具体的な提案を行っていく。KAGRAでの実証実験については、それがスムーズに行えるように、KAGRAのメンバーと積極的に連絡をとり研究を推進していく予定である。
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