2018 Fiscal Year Annual Research Report
矮小銀河星化学組成および短寿命放射性r核種で迫る中性子星合体の元素合成
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
18H04593
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
辻本 拓司 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (10270456)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | r過程元素 / 中性子星合体 / 重力波 / 矮小銀河 / 隕石 / 強磁場超新星 |
Outline of Annual Research Achievements |
矮小銀河Sextansのr過程元素組成を測る観測提案をすばる望遠鏡に提出し、無事に採択され3夜も観測時間として割り当てられた事実は、本研究の目指すサイエンスが高く評価された表れである。その観測を3月に行ない、有意義な観測データを得ることに成功した(実際はハワイ島で発生した地震と悪天候のため1夜のみの観測となったが、目標達成のための最低限のデータを取得できた)。現在データを解析中であり、その結果を受けて今後サイエンスを展開していくこととなる。 また、研究協力者である西村氏との共同研究にて亜鉛の起源に関する研究を進め、論文(Tsujimoto & Nishimura, ApJL)としてまとめ受理された。亜鉛の銀河系における組成進化が、特殊な超新星の一つである強磁場超新星起源で無矛盾に説明できることを明らかにした。同時に銀河形成初期にはこのタイプの超新星の出現が卓越していたことを予言することとなった。一方で、中性子星合体起源説では、その組成進化をうまく説明できないという結論を得た。 さらに、隕石の同位体異常について研究協力者である横山氏と検討を進め、同位体異常が見られるr過程元素の異常値のパターンが、太陽系形成時に近傍で起きたと考えられる重力崩壊型超新星での合成パターンである可能性が強く示唆されることを指摘した。これは軽いr過程元素は通常のニュートリノ駆動型の超新星で合成される可能性を意味し、その検証を星の化学組成解読で行うという今後の研究の動向を与えることとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すばる観測プロポーザルの採択、その観測の遂行、そして現在データ解析中であることから、順調に進展していると言える。また理論サイトからも、中性子星合体からの元素合成の主要な起源としての質量数の下限値(亜鉛は含まれない)に制限を与えることができたことも、重要な成果と言えるからである。さらに、隕石分析からは軽いr過程元素も中性子星合体が主要な起源ではないという示唆が得られたことも、この評価につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
大きな柱を2つ掲げ、研究を推進していく。1つ目は、前年度に得られた矮小銀河Sextansの観測データの解析結果からr過程元素の起源進化に関する知見を得、それを論文にまとめる。もし今回得られた観測データでは不足の場合は、再度すばる観測を提案することも視野に入れたい。2つ目は、隕石で得られた軽いr過程元素が中性子星合体ではない可能性を星の化学組成の解読から検証し、その是非を紐解いていく。
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