2018 Fiscal Year Annual Research Report
computation of high-precision gravitational waveforms from the merger of black hole-neutron star binaries
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
18H04595
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
久徳 浩太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (30757125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 重力波 / 相対論 / ブラックホール / 中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホール・中性子星連星合体の低離心率初期条件を、質量比・スピンおよびその傾き、さらに中性子星の状態方程式について、当初計画よりも広範囲なパラメータ領域で導出した。質量比についてはブラックホールが中性子星の1倍から7倍、スピンは無次元化したKerrパラメータが0から0.75、状態方程式は2段階ポリトロープおよび4段階ポリトロープを用いた。当初はもっと限られたパラメータ領域での長時間計算による重力波導出を行う予定だったが、連星中性子星合体GW170817発見後の進展に伴う知見の蓄積を取り入れ、同時にいくつかの計算上の困難に対処するため、計画を変更した。この研究と並行して、重力波観測プロジェクトLIGOに所属する研究者らとの共同により、ブラックホール・中性子星連星合体に伴う重力波を観測できたとき、中性子星の性質をどの程度正確に制限できるかを調べた。具体的には自分およびアメリカのグループによって独立な手法・コードで計算された2種類の波形を、各々について複数の解像度で用意し、重力波波形から抜き取られる潮汐変形率の誤差をFisher解析によって推定した。その結果、ブラックホールが重い場合について系統誤差が大きくなる傾向があることが、定量的に明らかになった。特に現状の波形を用いて実際の重力波を解析する場合、悪い場合では潮汐変形率測定の統計誤差にとどまらず値そのものよりも系統誤差が大きく、潮汐変形率の有意義な決定が事実上不可能でありさえすることを突き止めた。この結果はさらなる高精度波形計算の重要性を裏付けると同時に、近未来的に解決すべき課題に取り組むための当初計画の変更を後押しした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記載の通り、当初計画していたよりも多くのパラメータで低離心率の初期条件を導出できたことは予想を上回る進展である。一方、当初の期待と異なり、低質量比や高スピンなどの(多少なりとも)極限的なパラメータ領域では離心率の低減が難しくなることを突き止めたため、シミュレーションの遂行および重力波波形の導出は後回しになっている。この点については、ブラックホールの半径が小さいために十分な解像度を確保することが通常よりも難しくなっているなど、理由の解明ととも解決の目処もある程度立っており、今後まとめてシミュレーションを進めていく予定である。同時に、状態方程式を変えると予想以上に低離心率の初期条件を実現するパラメータが変わってしまうこともわかった。これは物理的に妥当な振る舞いとは考えづらく、パラメータの与え方に再考が必要であることが示唆される。連星中性子星の場合との比較は進んでいることから、全体的には少々の遅れと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き様々なパラメータにおいて離心率を減らした初期条件を計算しつつ、得られた連星の準平衡形状の詳細な性質を調べ、パラメータの与え方あるいは計算手法自体も再検討する。重力波の導出については、パラメータ領域が極端でなく計算が比較的容易な場合について優先的にシミュレーションを進め、計算上の課題がある極限的なパラメータ領域では困難の解決に応じて順次計算を進める。低質量比や高スピンなど興味深い場合について、ブラックホールの半径が小さくなることによって必要な計算機資源が大きくならざるを得ないことがわかったため、長時間・高精度計算するモデルは厳選する。
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Research Products
(24 results)
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[Book] 重力波の源2018
Author(s)
柴田 大、久徳 浩太郎
Total Pages
224
Publisher
朝倉書店
ISBN
978-4-254-13801-6
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