2018 Fiscal Year Annual Research Report
重力波起源天体の形成過程の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Gravitational wave physics and astronomy: Genesis |
Project/Area Number |
18H04596
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩澤 全規 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (10650038)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力波 / N体シミュレーション / 星団 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年以降、重力波検出器により連ブラックホール(BBH)や連中性子星(BNS)からの重力波の直接検出が相次いでいる。BBHやBNSからの重力波の観測により、そのBH やNSの質量が分かるため、星の初期質量関数(IMF)や恒星の進化モデル等に制限が与えられると考えられる。また、BNS の合体はrプロセス元素の起源となるので、銀河の化学進化に大きな影響を及ぼしている可能性があり、BBHやBNSの形成過程を解明することは重要である。本研究課題では星団のN体シミュレーションを行う事で、星団内でのBBH、BNSの形成過程を研究する。 N体シミュレーションを用いた、星団内でのBBHやBNSの形成過程の研究は過去にも行われているが、それらの研究で用いられているシミュレーション手法(エルミート積分法)では計算量の観点から、100万程度の星からなる典型的なサイズの星団のシミュレーションは難しい。そのため、当該年度では、典型的な球状星団を取り扱うための並列N体シミュレーションコードの開発を行ってきた。具体的には、ツリー法とエルミート法を組み合わせたParticle-Particle Particle-Tree法を用いて計算量を減らし、粒子シミュレーション法開発フレームワークFDPSを用いることでシミュレーションコードの並列化を行った。また、本計算では計算ノード間の通信がボトルネックとなるため、通信量を減らすアルゴリズムの開発も行った。このコードにより、典型的なサイズの球状星団のシミュレーションは可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度に本研究で用いるN体シミュレーションコードを完成させる予定であった。N体シミュレーションコードのメインの積分ルーチンの開発は終了しており、非常に高い実行性能および並列化効率は確認した。しかし、星団内で形成される連星の軌道を精密に積分するためのモージュールの開発が少し遅れている。これは、連星に与える星団からの潮汐力の計算アルゴリズムの開発に当初予定したよりも時間がかかってしまったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
星団内の連星の軌道積分モジュールの開発に遅れが生じているため、この部分の完成を急ぐ。また、コード開発と並行してすでに開発したN体シミュレーションコードに簡易的に連星を扱う方法を取り入れ、星団のシミュレーションを行っていく。具体的には連星の近傍に摂動天体がいない場合は、連星の軌道はケプラー運動として、計算時間の短縮を図る。この方法でも連星の束縛エネルギーに関しては正確に解くことができるため、星団の力学進化を研究することは可能である。
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