2018 Fiscal Year Annual Research Report
母親の行動を制御する化学コミュニケーション
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
18H04601
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
室井 喜景 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (80552760)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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Keywords | 母性行動 / 嗅覚 / 攻撃行動 / 養育行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
出産後3-5日の初産BALB/c系雌マウスが居住するケージ内に3日齢から28日齢までの各日齢のC57BL/6J雄マウス(侵入者)を導入し母マウスの行動を評価した。その結果、母マウスは14-15日齢以降の侵入者を攻撃することがわかった。 嗅覚受容器の一つである鋤鼻器を摘出した母マウスに侵入者を提示したところ、養育行動は発現するが攻撃行動は発現しなくなった。このことから鋤鼻器で受容される嗅覚シグナルによって攻撃行動が誘起される可能性が示唆された。 侵入者の性別が母マウスの攻撃行動に影響するか検討するためC57BL/6J雌マウスを提示したところ、雄と同様に母マウスの攻撃を受けた。このことから母マウスの攻撃行動を誘起するために、侵入者の性差は関係ないことが示唆された。 また侵入者の系統差を検討するため、母マウスにDBA系、FVB系、ICR系雄マウスを提示したところ、いずれの系統の侵入者に対しても攻撃を仕掛けた。このことから系統差は関係ないと考えられる。 母マウスの養育行動と攻撃行動を制御する神経機構を明らかにするため、内側前頭前皮質や外側手綱核からグルタミン酸神経の入力を受けている背側縫線核に着目した。養育行動と攻撃行動の発現調節への関与を調べたところ、背側縫線核のグルタミン酸シグナルは攻撃行動の発現に必要であるが、養育行動の発現に抑制的に作用することがわかった。すなわち背側縫線核のグルタミン酸シグナルによって養育行動と攻撃行動が相反的に制御されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
応募時に予定していた研究計画から若干の変更があったが、到達目標を達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、母マウスの攻撃行動を誘起する侵入者由来の物質を特定する。この点に関して、研究班員との共同研究を予定しており、物質の分離・精製を目指す。 侵入者由来の情報を母マウスが受容し、攻撃行動に至るまでの神経機構を明らかにする。その結果、侵入者が発する物質から母マウスの攻撃行動に至るまでの一連の反応経路を明確にすることができる。
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Research Products
(7 results)