2018 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical signaling analysis of membrane-binding natural products using synthetic probes
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
18H04603
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
叶 直樹 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (40317293)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗真菌性ポリエンマクロラクタム / 細胞膜脂質 / 安定化誘導体 / 光学異性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、抗真菌性ポリエンマクロラクタム heronamide C の安定化誘導体の合成を実施した。Heronamide C の作用機作解析を困難にしていると考えられる要因の一つに、光照射条件、および酸素雰囲気下での熱条件に対するポリエンマクロラクタム骨格の高い反応性がある。実際、その反応性を確認するために、今回、 heronamide C をラマンイメージング測定条件に付したところ、レーザー照射下で heronamide C 由来のシグナルの減少が確認された。ポリエンマクロラクタム骨格の高い反応性には、 光照射条件、酸素雰囲気下での熱条件のいずれに対しても、C16-C17 位オレフィンの存在が大きく関わっていることが示唆されている。そこで、分子力場計算によって、分子のコンフォメーションに大きな違いが無いことが想定された C16-C17 位部分飽和体(C16-C17オレフィンを飽和させた誘導体)をデザインし、これまでに確立したフラグメント構築法とポリエンマクロラクタム環化法を駆使して、その合成に成功した。また、紫外線照射条件に対して、この C16-C17 位部分飽和体が heronamide C より高い安定性を持っていることを確認した。現在、本部分飽和体の NMR を用いたコンフォメーション解析、生物活性試験、およびラマンイメージング用レーザー照射条件への耐性を検討している。一方、heronamide C とその細胞内標的と考えられる脂質分子との間にキラル認識があるかどうかを確認するために、heronamide C の光学異性体の合成も実施し、今年度は2種類の重要中間体の合成まで行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Heronamide C のラマンイメージング測定条件に対する安定性を実際に評価できたこと、また、本年度に計画していた heronamide C の C16-C17 位部分飽和体の合成を完了し、光照射に対する安定性を確認できたことは、重要な成果だと言えるため、おおむね順調に進展していると評価した。一方、予定していた C29 位トリフルオロメチル化体の合成はまだ完了していない。これは、このトリフルオロメチル基を有する C14-C15 位フラグメントの合成が予想に反して困難であったことに起因しているが、既に幾つかの解決策を検討しており、次年度には合成と評価が可能であると見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した C16-C17 位部分飽和体のコンフォメーション解析、生物活性試験、およびラマンイメージング用レーザー照射条件への耐性の確認が先ず必要である。予想通り抗真菌活性が保持されていれば、本化合物を用いたラマンイメージング解析などの細胞内/細胞膜内局在解析を実施すると共に、より特徴的なラマンシグナルを与えるジインプローブの合成とこれを用いた細胞内/細胞膜内局在解析を併せて検討する。一方、予想に反して C16-C17 位部分飽和体に活性が無かった場合でも、本化合物は良いネガティブコントロール化合物となり得るため、その物性や脂質二重膜に対する結合能、および細胞内/細胞膜内局在などに関して heronamide C との違いを明らかにし、heronamide C の活性発現の本質に迫る。 前年度に合成を計画した C29 位トリフルオロメチル化誘導体も、引き続き合成と評価を実施する。 Heronamide C の活性発現に生体分子とのキラル認識が関わっているかを確認するための heronamide C 光学異性体の合成も継続して行う。合成が出来次第、抗真菌活性の確認と、ラマンイメージング解析などを用いた細胞内/細胞膜内局在解析を実施する。 これらの検討結果を基に、最も適切と判断された分子を真菌細胞に投与して、heronamide C の真菌内での時空間的挙動を探る。
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Research Products
(4 results)