2018 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical communication of venomous mammals
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
18H04613
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北 将樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30335012)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 哺乳動物毒 / 化学コミュニケーション / 生物活性 / ペプチド / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
動物由来の天然毒には、フグ毒テトロドトキシンなど、ユニークな構造や切れ味鋭い活性をもつものが多い。また加速進化により、有毒動物の生理活性ペプチドには構造・機能に多様性がみられる。このような新規神経毒の化学的解明は、薬理学・神経科学・精神医学など広範な生命科学の基礎研究に寄与し、また疼痛治療薬など新規薬剤の開発にも直結する。本研究では、化学生態学・進化学的にも興味深い希少な哺乳類由来の有毒物質の構造・機能の解明と、より高活性な神経毒アナログの創製を目指した。さらに、これらの神経毒について異種の哺乳動物がもつ類似化合物と構造や機能を比較し、独自に進化してきた種がもつ化学コミュニケーション物質の生物学・生態学的意義を探ることを目指した。 1. ブラリナトガリネズミ由来の麻痺性神経毒BPP類の構造決定と合成 : ミールワーム麻痺活性などを指標に、顎下腺抽出物から48~53アミノ酸残基からなる新規ペプチド BPP1,2を単離し、全アミノ酸一次配列と3組のS-S結合の存在を決定した。パッチクランプ実験によりBPP2にCaチャネル開口活性がみられ、かつこの活性はN型Caチャネル阻害剤ω-コノトキシンにより阻害された。BPP類はヒト脳内で発現している生理活性ペプチドの前駆体と類似しており、生物進化の観点からも非常に興味深い物質であることがわかった。 2. カモノハシ毒液由来の CNP 断片ペプチドの作用機序解明と新奇神経毒リガンドの創製 : これまでに発見したカモノハシ毒液由来のC型ナトリウム利尿ペプチドホルモン(CNP) の部分断片について薬理活性評価を行い、それ自身ではGABA受容体に作用しないが、GABAリガンドのアロステリック調節を担う作用が示唆された。今後さらに詳しい作用解析を行い、炎症や痛みに特異的に作用する新規神経毒リガンドの創出を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した研究内容が順調に実施できていると判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
公募研究の2年目にあたる今年度は、(1) BPP類の標的受容体との結合様式の解明と高活性アナログの創出、(2) トガリネズミ麻痺性神経毒の種間比較および化学コミュニケーションの解明を主に実施する。リコンビナントBPP類の生産については目処が立っており、二次構造と生物活性の解明を目指す。そのために、これまでも協力いただいてきた電気生理学やペプチド科学の研究者に加えて、本新学術領域の計画研究班・総括班の先生方との連携も一層密にすることで、効率的に研究を進めていきたい。
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