2018 Fiscal Year Annual Research Report
Asymmetric synthesis of quaternary carbons by using active species generated from a hybrid catalyst
Publicly Offered Research
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
18H04654
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
西形 孝司 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (90584227)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラジカル反応 / 有機金属反応 / アルキル化 / 第四級炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
一つの反応系で二つの異なる活性種(ラジカル種と有機金属種)を用いることができるハイブリッド触媒系の反応開発に関して、30年度は以下2つの成果を得た。 1.第三級アルキルラジカル種と有機銅種によるクロスカップリング反応開発:鈴木―宮浦カップリングは、sp2炭素導入法として優れた反応である。しかし、対応するハロゲン化第三級アルキルを用いることは触媒素反応上の問題から困難である。そこで、ラジカル種と有機金属種を用いることができるハイブリッド触媒系を用いて反応開発に取り組んだ。αブロモカルボニルを第三級アルキル源とすると、銅触媒存在下、アルケニルホウ素との対応するクロスカップリング反応を行うことに成功した。これにより、第四級炭素を合成できた。機構解析の結果、アルケニル銅と第三級アルキルラジカル種が反応することで進行していることが分かった。 2. 第三級アルキルラジカル種とシアン化銅によるカップリング反応開発:シアノ化反応は、シアノ基が様々な官能基に変換できることから魅力的な反応である。本研究では、ペプチドをシアノ基で修飾するための反応開発に取り組んだ。その結果、立体的にかさ高い第三級アルキル構造を持つαブロモカルボニルを有するペプチドに対して、銅触媒存在下、シアン化亜鉛をシアノ化剤として反応に用いると、対応するシアノ化反応の進行を確認した。本反応はジペプチド、トリペプチドあるいはそれ以上の長さをもつペプチド鎖に有効である。ラジカルと有機銅種のハイブリッド触媒系が、ペプチド修飾にも有効であることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までに、次の二つの反応系開発に成功した。1.第三級アルキルラジカル種と有機銅種によるクロスカップリング反応開発、及び2. 第三級アルキルラジカル種とシアン化銅によるカップリング反応開発。これらの研究より、一つの反応系で二つの異なる活性種を用いることができることを示すことができた。さらにこの結果を受けて、有機触媒から生じた活性種と銅種から生じたラジカル種を触媒的に反応させることに成功した。さらに、スチレン類とアクリレート類を銅触媒条件下、αブロモカルボニルと反応させると2つのオレフィンの配列を厳密に制御した3成分反応の開発にも成功した。30年度に得られた結果が非常に大きな波及効果を及ぼしており、現在までの進捗状況を上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を達成するためには、1) ラジカル種と有機金属種の両方を発生・制御するハイブリッド機能を備えた金属錯体の設計・合成と、2) 開発したハイブリッド機能触媒を用いた多様な第四級炭素の構築反応開発を行う合成化学的研究の2項目を達成する必要がある。2年間でこれらを集中的に研究することで、ハイブリッド機能触媒から発生させた高反応性ラジカル種と有機金属種を協働・重奏することで、複雑で付加価値の高い有機分子を迅速かつ精密に組み上げる手法の開発を目指す。 2018年度に、上記の1)の研究を通して異種活性を使用するための知見を集めることができた。2019年度も引き続きラジカル種と有機金属種のハイブリッド触媒系開発に取り組む。具体的には、シアン化亜鉛と銅触媒から発生させたシアン化銅と、α―ブロモカルボニルと銅触媒との反応から生じたラジカル種をカップリングさせる反応に取り組む。すでに、条件検討を終了しており、基質適用範囲の拡大を検討している。この中で得られた重要な知見は、本反応がペプチド誘導体のシアノ化に有効であることである。現在は様々なペプチドと反応させるべく九州大学國信グループと共同研究を行っている。 続いて、2019年度は前年度の知見を活かしたハイブリッド触媒系、すなわち、有機触媒と遷移金属触媒を組み合わせた反応系開発に取り組む。予備的検討では、プロリンの主骨格であるピロリジンを1当量用いてケトンと系中で発生させたエナミンと、α―ブロモカルボニルと銅触媒との反応から生じたラジカル種が反応することを見出している。本年度は、ピロリジンなどを触媒量で用いることができる条件を精査し、さらに、設計した不斉ピロリジン触媒を用いて、不斉第四級炭素合成反応開発を目指す。不斉ピロリジン誘導体に関しては、東北大学林グループと共同研究を行っており、優れた設計指針を作り出す予定である。
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Research Products
(9 results)