2018 Fiscal Year Annual Research Report
混合溶媒中におけるハイブリッド触媒反応の分子論的機構解明
Publicly Offered Research
Project Area | Hybrid Catalysis for Enabling Molecular Synthesis on Demand |
Project/Area Number |
18H04657
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
東 雅大 琉球大学, 理学部, 助教 (20611479)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハイブリッド触媒反応 / 混合溶媒 / 理論計算 / 分子シミュレーション / 遷移状態解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水を添加すると大幅に反応性が向上するハイブリッド触媒反応の分子論的機構を理論計算により明らかにすることである。 本年度は、有光暁助教(琉球大)らにより開発されたハイブリッド触媒反応における水の影響を解析した。この反応は、アミン触媒と酸触媒により従来はγ-位に付加しやすいα,β-不飽和アルデヒドのα-位を立体選択的にフッ素化するが、水を少量添加すると反応性が向上する。しかし一方、水を過剰に添加すると鏡像体過剰率が低下する。この反応の分子レベルでのメカニズムを解明するために、量子化学計算と分子性液体の統計力学理論のハイブリッド計算手法である3D-RISM-SCF法を用いて、有機溶媒と水の様々な混合比での遷移状態の活性化エネルギーを計算した。 得られた計算結果から、水の混合比が増えると、活性化エネルギーが減少することや、主生成物と副生成物の活性化エネルギーの差が小さくなることが明らかになった。これらの計算結果は、実験結果とよく一致する。また詳細な解析の結果、水が増加するにつれて活性化エネルギーが減少するのは、水が相対的に反応物を不安定化させるためと分かった。さらに、水の増加により主生成物と副生成物の活性化エネルギーの差が小さくなるのは、副生成物の遷移状態の方が酸触媒と水が強く相互作用するためと明らかになった。現在、論文を投稿する準備を進めている。 また、林雄二郎教授(東北大)と山中正浩教授(立教大)と共同で、水の添加量により立体選択性が反転する不斉マイケル反応の解析も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定通り、有光暁助教(琉球大)らにより開発されたハイブリッド触媒反応における水の影響の解析を行った。理論計算により水の影響を明らかにし、論文を投稿する準備も進めているため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に得られた研究成果を基に、David MacMillan教授(プリンストン大)らにより開発された特定のC-H結合をアリール化するハイブリッド触媒反応(Shaw et al. Science 2016, 352, 1304)のメカニズムを明らかにする予定である。また、今後も本新学術領域の様々な研究者と協力し研究を推進することで、領域の発展に貢献したい。
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Research Products
(8 results)