2018 Fiscal Year Annual Research Report
転写共役因子PGC-1αによる骨格筋ミトコンドリアのリポクオリティ恒常性の維持
Publicly Offered Research
Project Area | Quality of lipids in biological systems |
Project/Area Number |
18H04677
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
三浦 進司 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (10342932)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | カルジオリピン |
Outline of Annual Research Achievements |
カルジオリピン(CL)は脂肪酸が4つ結合したリン脂質であ理、ミトコンドリア内膜構造の形成・維持や呼吸鎖関連タンパク質などの機能調節に関わる。PGC-1αはミトコンドリア生合成を促進するため、同時にCLの量や質を調節している可能性があるが、CL生合成へのPGC-1αの関与には不明な点が多い。そこでPGC-1αが骨格筋CLの量と質に及ぼす影響、CL生合成に果たす役割を検討した。PGC-1αを過剰発現させた骨格筋ではCL量が著しく増加した。特にリノール酸を含むCLが顕著に増加した。また、CL生合成に関わる遺伝子のうちCDP-DAG合成を担うCds1、リノール酸をリン脂質に組み込むLPAAT2の発現が、PGC-1α過剰発現により増加した。CL生合成の律速であるCDP-DAG合成は、3種類の酵素(Cds1, Cds2, Tamm41)が触媒する。CL生合成に利用されるCDP-DAGは、Tamm41がミトコンドリア内膜で合成すると考えられているが、本研究においてTamm41の発現にPGC-1αの影響は認められなかった。CL生合成へのCds1の寄与は不明なため、Cds1をC2C12細胞に強制発現させ、その影響を調べた。その結果、Cds1の単独発現ではCL量は増えず、Cds1とPGC-1αを同時に発現させたとき、CL量とミトコンドリア膜電位が増加した。従って、PGC-1αは、Cds1の発現調節に加えて、CDP-DAGの利用にも関わる可能性が示され、これらの協調作用によってCL生合成が促進し、ミトコンドリア機能が高まったと考えられた。以上より、PGC-1αは、Cds1とLPAAT2の発現、ならびにCDP-DAG利用に関わる何らかの機能を調節することによって、CLの量と質を制御し、ミトコンドリア生合成に適応させていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた研究内容を概ね実施することができた。また、次年度に予定している実験の一部を着手することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
PGC-1αが制御するCLの脂肪酸クオリティ:骨格筋のCLにC18:2が集積する理由につき、ホスファチジン酸(PA)合成時にC18:2が組込まれる反応と、CDP-DAG合成段階の脂肪酸種認識機序に着目して検討し、CL(18:2)4増加に関与するPGC-1α標的遺伝子群を明らかにする。 CL量やCLに結合する脂肪酸クオリティ操作が筋ミトコンドリアに及ぼす影響:CL生合成やリモデリングなどに関与することが見出された遺伝子について、それぞれの発現量を変化させたモデルを作製し、CL量やCLに結合する脂肪酸種の操作が筋ミトコンドリア機能に及ぼす影響を明らかにする。
|