2018 Fiscal Year Annual Research Report
三叉神経のTRPA1を介した急激な体温低下を生みだす脳内メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological phenomena with temperature as a key theme |
Project/Area Number |
18H04684
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 勝康 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (70507920)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 温度 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は恐怖刺激に対して生存戦略の中で最も適切な行動・生理的反応を無意識に選択・実行する。この生理反応の中でも顕著な変化が認められる反応は、生命維持に必須である体温の変化である。本研究では、恐怖刺激下で体温を急激に変化させる生体恒常性維持機構を超越した脳内の緊急用スイッチを同定することを目的とする。 まず、恐怖刺激による体温低下に関与する神経細胞群の同定を行った。方法は以下の通りである。1. 恐怖刺激(恐怖臭)をマウスに与える。2. 灌流固定を行い脳を摘出する。3. 脳切片を作成し、活性化した神経細胞のマーカーであるFosの発現を免疫組織化学染色によって可視化する。4. すべての脳切片の染色像を共焦点レーザー顕微鏡で取得する。この実験を、野生型マウスおよび刺激臭に対して恐怖反応を示さないマウス(Trpa1-KO)を用いて行い、両者のFos発現パターンを比較した。その結果、野生型マウスとTrpa1-KOマウスの間で神経活動の異なる脳領域を同定することができた。これらの脳領域は、恐怖刺激による体温低下の誘発に関与している可能性が考えられた。次に、Fosマッピングによって同定した脳領域の神経細胞群の活動が体温低下を誘発するのかを検討するために、オプトジェネティクスを用いて神経活動の操作を行った。方法としては、上記で同定した神経細胞群をChR2で標識し、光ファイバーを介して光刺激を行い、体温変化を検討した。その結果、Fosマッピングによって同定された脳領域の中で、光刺激によって体温低下を引き起こすことができる脳領域の同定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画では、Fosマッピングによって同定された神経細胞群を、神経活動依存的に標識・操作することができるCANEシステムをもちいて標識・操作する予定であった。しかし、CANEシステムに必要なトランスジェニックマウスの導入及びそのコロニーの増加に時間がかかったために、方法を変更した。変更後の実験内容および進歩状況は以下の通りである。 まず、恐怖刺激による体温低下に関与する神経細胞群の同定を行った。方法は以下の通りである。1. 恐怖刺激(恐怖臭)をマウスに与える。2. 灌流固定を行い脳を摘出する。3. 脳切片を作成し、活性化した神経細胞のマーカーであるFosの発現を免疫組織化学染色によって可視化する。4. すべての脳切片の染色像を共焦点レーザー顕微鏡で取得する。この実験を、野生型マウスおよび刺激臭に対して恐怖反応を示さないマウス(Trpa1-KO)を用いて行い、両者のFos発現パターンを比較した。その結果、野生型マウスとTrpa1-KOマウスの間で神経活動の異なる脳領域を同定することができた。これらの脳領域は、恐怖刺激による体温低下の誘発に関与している可能性が考えられた。次に、同定した脳領域の神経細胞群の活動が体温低下を誘発するのかを検討するために、オプトジェネティクスを用いて神経活動の操作を行った。方法としては、上記で同定した神経細胞群をChR2で標識し、光ファイバーを介して光刺激を行い、体温変化を検討した。その結果、Fosのマッピングによって同定された脳領域の中で、光刺激によって体温低下を引き起こすことができる脳領域の同定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.恐怖刺激による体温低下誘発神経細胞群の抑制実験 昨年度のFosマッピングおよびオプトジェネティクスによる実験により、恐怖刺激によって体温の低下を誘発する神経細胞群の同定に成功した。これらの神経細胞群の神経活動を抑制することによって恐怖刺激による体温の低下を抑制することができるのかを検討するために、以下の実験を行う。抑制性のDREADD-hM4Diを発現するアデノ随伴ウイルスを昨年度に同定した恐怖刺激による体温低下誘発に関与する神経細胞群に感染させる。それらの神経細胞群の神経活動をCNO投与によって抑制した状態で恐怖刺激を行い、体温の変化を測定する。これらの神経細胞群の活性化が体温低下に必要であるならば、抑制によって体温低下が誘発されないことが推察される。 2.恐怖刺激による体温低下誘発神経細胞群の神経活動の計測 恐怖刺激によって体温低下を誘発する神経細胞群の神経活動を計測するために以下の実験を行う。 カルシウムセンサーであるGCaMP6を発現するアデノ随伴ウイルスを昨年度に同定した恐怖刺激による体温低下誘発に関与する神経細胞群に感染させる。つぎに、その標的領域の上部に光ファイバーを挿入・固定する。これにより、恐怖刺激によって活性化する、すなわち急激な体温低下に関わる神経細胞群の神経活動を計測することが可能となる。恐怖刺激によって神経活動が活性化した後に体温低下が観察されることが推察される。また、体温上昇時にはこれらの神経細胞の神経活動は低下することが推察される。 上記の実験では、皮膚体温および深部体温の両方を計測する。
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