2018 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類神経細胞に秘められた低温応答メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological phenomena with temperature as a key theme |
Project/Area Number |
18H04685
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大西 浩史 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70334125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 低温応答 / チロシンリン酸化 / 神経細胞 / クロライド |
Outline of Annual Research Achievements |
膜貫通型タンパク質SIRPα(Signal regulatory protein α)は神経細胞に強く発現するシグナル分子であるが、その機能は十分に明らかとなっていない。これまでに、低温ストレスを受けた神経細胞において、SIRPαの細胞内領域がチロシンリン酸化されて活性化することを明らかとしている。本研究では、このシグナルの低温への応答メカニズムや生理機能の解析により、哺乳類神経細胞がもつ低温応答反応の分子メカニズムとその生理的意義を明らかにする。これまでに、初代培養神経細胞以外のモデル系として、SIRPαを内在性に発現する株化ミクログリア細胞でも神経細胞同様に低温誘導性にSIRPαチロシンリン酸化が誘導されることを明らかとした。このモデル細胞および初代培養神経細胞を用いた解析では、低温刺激以外に細胞外クロライドの除去によってもSIRPαの活性化(チロシンリン酸化)が誘導され、さらに、低温刺激と細胞外クロライド除去刺激のいずれの場合も、複数のクロライドチャネル阻害剤がSIRPαリン酸化を抑制した。この効果を示す阻害剤の種類にもとづき、神経細胞の容積調節性クロライドチャネルの機能が低温誘導性SIRPαリン酸化に必要である可能性が考えられた。またクロライドATPaseの阻害剤も低温誘導性のSIRPαリン酸化増強を阻害することも見出しており、クロライドチャネル以外にクロライドポンプの機能の関与の可能性も考えられた。低温応答性SIRPαシグナルが関与する神経細胞機能について、クロライドチャネルが関わる細胞体積変化の調節や低温が示す酸誘導性神経細胞死抑制作用との関連について検討したが、少なくとも神経細胞において、低温が示す酸誘導性神経細胞死抑制作用とSIRPαシグナルは関連しないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
株化細胞を用いた低温によるSIRPαチロシンリン酸化のモデル系を確立することができた。また、低温刺激以外に細胞外クロライド除去刺激がSIRPαリン酸化を誘導することを手掛かりに、阻害剤による解析の結果から、細胞容積調節性クロライドチャネルの機能が低温誘導性SIRPαリン酸化に必要である可能性を見出した。さらに、クロライドチャネル以外にクロライドATPaseの働きが必要である可能性も示された。機能面については、低温誘導性SIRPαリン酸化が関与する可能性のある細胞機能を示すことはできなかったが、低温による酸誘導性細胞死の抑制については、神経細胞においてSIRPαシグナルが直接関与する可能性が低いと予測されることから、結果的に別の細胞機能の検討へと検討の方向性を絞り込んでいる。以上の成果より、全体として計画はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
低温による神経細胞内クロライド濃度の変化の有無について検討を行う。 SIRPαの近傍分子を同定し、それらの機能を手がかりに、クロライドダイナミクスと低温応答反応のつながりを予測する。また、クロライドチャネルやクロライドATPaseあるいはそれらに関連分子がSIRPα複合体に含まれる可能性を踏まえて重点的に解析する。 クロライドATPase阻害剤の効果がSH基の修飾作用である可能性があるので、SH基修飾剤を用いてこの点を検討する。SH基の修飾が標的となっていた場合にはこれを手掛かりに阻害剤の標的分子の同定を進める。 機能面では前年度から継続して低温と細胞容積変化の関連について解析を行う。また、報告されている低温による神経活動性の増強とSIRPαリン酸化の関連についても解析を行う。 行動解析テストにより、低温が脳機能に与える作用とSIRPα欠損の影響を動物個体で解析する。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Microglial SIRPα regulates the emergence of CD11c+ microglia and demyelination damage in white matter2019
Author(s)
Sato-Hashimoto M., Nozu T., Toriba R., Horikoshi A., Akaike M., Kawamoto K., Hirose A., Hayashi H., Nagai H., Shimizu W., Saiki A., Ishikawa T., Elhanbaly R., Kotani T., Murata Y., Saito Y., Naruse M., Shibasaki K., Oldenborg P.-A., Jung S., Matozaki T., Fukazawa Y., Ohnishi H.
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Journal Title
eLIFE
Volume: 8
Pages: e42025
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] Control of microglia activation by SIRPα2018
Author(s)
Hiromi Nagai, Ayuto Shimoda, Tomomi Nozu, Ayano Horikoshi, Miho Akaike, Yuriko Hayashi, Miho Sato-Hashimoto, Hiroshi Ohnishi
Organizer
Workshop on Frontiers in Phosphatase Research and Drug Discovery/13th International Conference on Protein Phosphatase
Int'l Joint Research / Invited
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