2018 Fiscal Year Annual Research Report
温度情報から神経活動への変換機構
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological phenomena with temperature as a key theme |
Project/Area Number |
18H04693
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 郁恵 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90219999)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | cGMP動態 / Guanylyl Cyclase (GCY) / PhosphoDiEsterase (PDE) / DiAcylGlycerol (DAG) 動態 / 温度受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度受容は生物にとって重要だが、神経系がどのように温度情報を神経活動へ変換するかに関しては多くが不明である。線虫C. elegansの温度受容ニューロンAFDは、過去の飼育温度付近からの温度上昇に応答して細胞内カルシウム濃度を増加させるが (Kimura 2004, Kobayashi 2016) 、 AFDのカルシウム濃度変化には、cyclic GMP (cGMP) 合成酵素(Guanylyl Cyclase (GCY))が必須である(Inada 2006, Kobayashi 2016, Takeishi 2016)。 AFDのcGMPダイナミクスを、FRET型の蛍光プローブであるcGi500を用いて計測したところ、AFDの感覚末端においては、cGMPがカルシウムと同様に過去の飼育温度付近からの温度上昇に応じて増加し、過去の飼育温度付近からの温度下降に応じて減少することを見出した。一方で細胞体においては感覚末端のようなcGMPダイナミクスは見られなかった。 また、温度走性行動には3種類のGuanylyl Cyclase (GCY)であるGCY-8, GCY-18, GCY-23が必須である。これらのGCYがどのようにcGMPダイナミクスへ寄与するかを、各々のGCYの変異株および二重変異株を使って調べたところ、3種類のGCYはAFDのcGMPに寄与するが、各々の寄与度が異なることがわかった。 さらに、cGMPを分解するPhosphoDiEsterase (PDE)の変異株を解析した。一部の変異株で温度走性行動に異常が見られた。これらの温度走性異常を示すPDE変異株において、cGMPダイナミクスとカルシウムダイナミクスを観察したところ、PDEの欠失が各ダイナミクスに及ぼす興味深い影響が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項で述べたように、研究目的の達成に必要な研究実施事項を着実に遂行し、神経科学における重要な知見が得られつつある。また得られた成果を国際的な専門誌への論文として発表する準備を進めており、本研究計画期間内での発表が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
AFDのカルシウム濃度が増加してから、伝達物質の放出に至るまでの制御について、AFDから下流のAIY介在ニューロンへの出力にはDense core vesicle (DCV) とSynaptic vesicle (SV)を介する経路が存在する。DCVからの放出はAFDへの低濃度のカルシウム流入で起こるのに対して、SVからの放出には高濃度のカルシウム流入が必要と考えられている(Ohnishi 2011, Kuhara 2011)。また、DCVからの放出は興奮性であるが、SVからのグルタミン酸の放出は抑制性である。PKC-1は一般的に開口放出を促進するが、PKC-1の変異株では、AFDのカルシウム流入には特に異常が見られない一方で、行動レベルでは著しい好熱性を示す(Okochi 2005)。逆にPKCの活性を負に制御するDAG kinase (DGK)の変異株は好冷性を示す。AIYを破壊した線虫は好冷性になるため、AFDではPKCは抑制性のSVのみに作用している可能性が高い。 DAG/PKCがDCV・SVをどのように制御して2段階の閾値を実装しているのかを解明するために、DAGの蛍光プローブと、DCV, SVそれぞれのマーカータンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質をAFDに発現させて、DAG, PKC, DCV, SVの細胞内局在を調べる。また、温度刺激に対するDAGの時空間ダイナミクスの計測を行う。
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Research Products
(4 results)