2018 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study of chromosome shaping and segregation
Publicly Offered Research
Project Area | Chromosome Orchestration System |
Project/Area Number |
18H04708
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
境 祐二 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (70631779)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 染色体分離 / 高分子物理 / コンデンシン / 分子動力学 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂期染色体の形成はコンデンシン、トポイソメラーゼが重要な関連因子である。コンデンシンは、染色体にスーパーコイル・ループを形成する機能がある。また、コンデンシンどうしが引力相互作用することが示唆されている。トポイソメラーゼは染色体どうしのすり抜けを可能にする。 申請者は、これらコンデンシンとトポイソメラーゼの機能を考慮した数理モデルを構築し、分裂期における染色体の形成と分離のダイナミクスを数理モデルとシミュレーションを用いて解析した。 昨年度において、申請者はコンデンシンのループ形成と引力相互作用の2つの機能はともに分裂期染色体の形成や分離に重要であり、これらの機能が欠損すると染色体の形成や分離は失敗することを示した。これらの結果は、実験におけるコンデンシン部分欠損の表現型を定性的に再現する。 染色体分離のダイナミクスを考える上で、コンデンシンと共にトポイソメラーゼの活性も考慮する必要がある。さらに、クロマチンの初期配置(絡まり度)は分離のダイナミクスに影響を与え得る。 今年度は、コンデンシンの活性に加え、トポイソメラーゼの活性、クロマチン初期配置が染色体分離のダイナミクスに与える影響についてシミュレションを用いて解析した。 トポイソメラーゼが全くない場合は染色体分離は起こらない。トポイソメラーゼの効果は、排除体積ビーズ間距離としてモデル化しシミュレーションした。シミュレーションの結果は実験結果と定性的に一致した。また、共同研究者の実験において、コンデンシン同士が凝集体を形成して染色体分離が起こらない表現型が示された。モデルにおいてコンデンシン間引力を強くすることで、これらの実験結果を説明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験で示唆されているコンデンシンの3機能(ループ形成、引力相互作用、モーター活性)を考慮した数理モデルを構築することが本年度の目標であった。ループ形成、引力相互作用についてはモデルを構築し、シミュレーションを行なっているが、モーター活性を取り入れたモデル構築に至っていない。その点で当初の研究計画よりも遅れている。 しかし、来年度の研究計画に含まれていたクロマチンの初期配置(絡まり度)が染色体分離のダイアミクスに与える影響については、すでに解析しており当初の計画よりも進んでいる。 以上により、当初の研究計画に対して、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度同様、コンデンシンとトポイソメラーゼの活性の強さによる染色体分離ダイナミクスの影響についてシミュレーションによる解析を進めていく。また、当初の研究計画としてあった2種類のコンデンシンの活性の違いについて、実験グループと協力してシミュレーションを用いて研究していく。 コンデンシンはループを作ることによってクロマチンを束ね染色体を凝縮させていると考えられるが、このコンデンシンによるトポロジカルな拘束はクロマチン自体の局所的な動態に影響を与えると考えられる。コンデンシンがクロマチンを束ねることによる局所的なクロマチン動態に与える影響についてもシミュレーションを用いて解析していく。 本研究を進めていくうちに、染色体凝縮におけるKi-67の役割についての研究を新たにスタートさせた。Ki-67は染色体凝縮とともに染色体表面を覆うように染色体表層に局在する。このKi-67の染色体分離に与える影響についてモデリングとシミュレーションを用いて解析していく。
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Research Products
(7 results)