2018 Fiscal Year Annual Research Report
一分子再構成系を用いた染色分体間接着マシナリーの理解
Publicly Offered Research
Project Area | Chromosome Orchestration System |
Project/Area Number |
18H04711
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西山 朋子 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (90615535)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コヒーシン / 姉妹染色分体間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究から、コヒーシンとDNAとのトポロジカルな結合が接着機能に必須であること、またコヒーシンの結合因子や修飾因子が接着の確立・解除や、クロマチン高次構造制御に関わっていることが明らかにされつつあるが、未だにコヒーシンによる接着機構やクロマチンループ形成の具体的な分子作動機構は本質的な理解に至っていない。本研究ではDNA複製と一分子解析系をカップルさせた「一分子複製解析系」を用い、コヒーシン一分子の力学的特性を理解するとともに、この特性が実際の染色体接着機能やクロマチン構造をどのように制御し得るのかを理解することを目指す。この目的のために、初年度は、コヒーシン複合体の力学的特性と一分子動態解析をもとにした数理モデルの構築および、接着確立機構の解明を目指した。 力学測定系の構築では、直鎖DNAの両端をビオチン化したλDNAを作製し、ガラス基板上にDNAを結合させた。Scc1サブユニットのC末端にHaloタグを付加したhumanコヒーシンコア複合体は、Sf21細胞において発現・精製し、Haloタグを蛍光標識してDNAに結合させた。これと並行して、コヒーシン複合体のアーム、ヒンジ、ヘッドドメインの各種変異体、コヒーシン結合因子、修飾因子などのクローニングおよび発現用コンストラクトの作製、タンパク質精製、蛍光標識条件検討を行い、基本的なツールを準備した。この実験系構築過程で、当初予定されていなかった、ガラス基板上のたわんだDNAの形状に及ぼすコヒーシン複合体の作用を解析できる系の構築に成功し、これまで知られてこなかったコヒーシン複合体によるDNA形状変化の一分子レベルの解析が可能になった。また、接着確立機構の解明に向けて、接着確立因子Sororinのクロマチンへの結合を制御する因子の同定をヒト培養細胞において行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた力学測定系の構築は、光ピンセットを用いた操作系を構築するのにやや時間を要しており、完了には至っていないが、各種変異体の作製などは順調に進んでおり、予想外の系の構築にも成功した。接着確立因子のクロマチン結合制御因子のスクリーニングは途上であるが、いくつかの候補因子はすでに同定しており、総じて、現時点では概ね順調と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
力学測定系では光ピンセットを用いた操作系の構築を完了させる。DNAに結合させたコヒーシン複合体に更に2nd DNAを捕捉させ、2nd DNAを光ピンセットでトラップする、あるいはDNAに結合したコヒーシンを、タグ抗体ビーズを用いて直接トラップすることで、コヒーシンリングが牽引力に耐えうる力を測定する。初年度に作製した各種変異体で同様の検証を行うことで、これらの力学制御とコヒーシン複合体の構造的特徴との関連性を明らかにする。またWaplやPds5などのコヒーシン結合因子やコヒーシンアセチル化酵素Esco1/2などの修飾因子の有無によってこれらの力学特性が変化するかを検証し、コヒーシン制御因子がコヒーシンの力学的特性に及ぼす影響を明らかにする。接着確立機構の解明については、接着確立因子のリクルート機構を、ヒト培養細胞を用いて明らかにするとともに、このリクルート機構を一分子複製解析系で再現し、コヒーシン、接着確立因子、リクルーターの時空間的な相互関係を明らかにする。
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