2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analyses of the chromatin on the genomic repetitive DNA involved in hierarchical and functional structures of the chromosome
Publicly Offered Research
Project Area | Chromosome Orchestration System |
Project/Area Number |
18H04721
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Research Institution | Kazusa DNA Research Institute |
Principal Investigator |
舛本 寛 公益財団法人かずさDNA研究所, 先端研究開発部, 室長 (70229384)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人工染色体 / セントロメア / ヘテロクロマチン / 反復DNA / アルフォイドDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
染色体分配機能に必須なセントロメアでは、反復DNA(アルフォイドDNA)からなる巨大領域にヒストンH3バリアントであるCENP-Aを含んだクロマチンが集合する。このCENP-Aクロマチンを足場に多様な因子群が集積してキネトコア構造体を形成し、染色体の動きを調節する。一方、セントロメア内部ではヘテロクロマチンが集合し姉妹染色分体の接着・分離を調節する。しかし、同一反復DNAからなる巨大領域にどのようにこれらの異なるクロマチンが集合し機能統合体としての調和を保つのかについては不明なままである。本研究では、セントロメアの集合メカニズムを解明し、ヘテロクロマチンとの集合バランスとその変動が引き起こす影響について明らかにする。H30年度は以下の(1)、(2)の解析を進めた。(1)染色体機能形成の階層性とヘテロクロマチンの解析: 人工染色体や合成反復DNAを用いて、反復DNA上でCENP-B結合の有無によりクロマチンへの集合に大きな差を生じるヒストン修飾酵素やクロマチン関連因子をcDNAライブラリーからスクリーニングし、ヘテロクロマチン修飾に関わる Suv39h1, HP1やこれとは逆にオープン側修飾に関わるH3K36me2/3化酵素を同定し、これら因子のクロマチン集合バランスへの関与を明らかにした(Otake et al 投稿中)。(2)ゲノム反復DNA上のクロマチン構造の解析:RPE1細胞を用いてChIP-Seq解析を進め、ゲノム反復DNA上のCENP-Aクロマチン、CENP-B、ヘテロクロマチン(H3K9me3)、オープンクロマチン(H3K36me2/3)等の詳細な分布を明らかにした。CENP-B 遺伝子存在下と遺伝子破壊条件下で比較解析を進め、CENP-Bがクロマチン集合のバランス調節に関わっていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)染色体機能形成の階層性とヘテロクロマチンの解析: これまでにセントロメアを決定するCENP-Aクロマチンの集合に必須なMis18複合体とヒストンアセチル化酵素KAT7が相互作用し、KAT7によるクロマチンのアセチル化によりリモデリング因子RSF1が集合することを明らかにした。RSF1は、ヒストン交換反応を促進することで、ヘテロクロマチンの侵入をくい止め、HJURPによるCENP-Aクロマチンの補充を促進することも明らかにした。H30年度は、人工染色体や合成反復DNAを用いてCENP-B結合の有無によりクロマチンへの集合に大きな差を生じるSuv39h1, HP1やH3K36me2/3化酵素について解析を進めた。Suv39h1やHP1はヘテロクロマチン側に、H3K36me2/3化酵素はオープンクロマチン側にそれぞれCENP-B に依存して反復DNA上のクロマチン集合バランスを偏らせることを明らかにした(Otake et al 投稿中)。 (2)ゲノム反復DNA上のクロマチン構造の解析: セントロメアの巨大反復DNA領域のゲノム構造の解明は反復DNA解析の困難さに阻まれ遅れていた。CENP-Aクロマチン、CENP-B、ヘテロクロマチン(H3K9me3)、さらにオープンクロマチン(H3K36me2/3)がゲノム反復DNA領域上で実際どのように分布しているのかChIP-Seq法による解析を進めた。ヒトゲノムバージョンhg38と独自に作製した解析スクリプトを駆使して、RPE1細胞ゲノム反復DNA上の詳細なクロマチン構造について、CENP-B 遺伝子存在下と遺伝子破壊条件下で比較解析を進め、CENP-Bがクロマチン集合のバランス調節に関わっていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)染色体機能形成の階層性とヘテロクロマチンの解析: 反復DNA上のクロマチン構造に変動を引き起こす要因の有力候補と考えられるのは直接の結合タンパクであるCENP-Bである。CENP-BはCENP-Aクロマチンの集合促進・安定化に関わるが、これとは拮抗するヘテロクロマチン化も促進する。これまでに異所的部位での反復DNA上でCENP-Bの有無によりクロマチンへの集合に大きな差を生じるヒストン修飾酵素やクロマチン関連因子をcDNAライブラリーからスクリーニングし、ヘテロクロマチン因子Suv39h1, HP1やこれとは全く逆にオープン側因子のH3K36me2/3化酵素も同定した。今後はこれら因子の過剰発現やノックダウン、テザリングにより実際に集合バランスを撹乱した場合に、セントロメア機能や染色体分配に異常が生じるかどうかついて解析を進める。 (2)ゲノム反復DNA上のクロマチン構造の解析: 人工染色体を用いた構成学的手法によるセントロメア構造の階層的集合機構の解明は進んでいるが本来の天然ヒト染色体上の巨大反復DNA領域のクロマチン構造は不確かなままであった。これを実際に解析し、両者を比較することは極めて重要である。これまでの解析により、ヒトゲノムhg38を用い、高次反復単位(HOR)の塩基配列のわずかな違いにより区別することも可能になった。CENP-Aクロマチン、CENP-B、さらにH3K9me3、H3K27me3、H3K36me2/3等の修飾を指標とするヘテロクロマチンやオープン側クロマチンが本来のゲノム反復DNA領域上でCENP-Bの有無により実際にどのように集合するかについて確認作業を進め論文にまとめる。
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