2018 Fiscal Year Annual Research Report
Develpment of imaging technology for structural dynamics of synapses
Publicly Offered Research
Project Area | Resonance Biology for Innovative Bioimaging |
Project/Area Number |
18H04727
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 繁男 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (60204012)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分子神経生物学 / イメージング / 超解像技術 / シナプス / 分子動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では神経ネットワークの要であるシナプスの形成や維持の分子機構を探索するために必須の技術である、樹状突起スパインの形態と分子動態を定量的に測定するための技術開発を実施する。このために(1)厚い標本での樹状突起スパイン形態の高解像度画像取得を目指した技術開発、(2)多数のスパイン形態データを定量的・客観的に解析するための手法の開発、(3)分子動態に関するデータとスパイン形態のデータを統合するための方法論の探索の3項目の研究を実施する。前年度はこれらの項目の内、特に(2)についてスパイン形態の特徴を多次元空間内で表現し、かつスパイン形態の時間的な変化をこれに加えて解析することにより、新しいスパイン分類を提案した。この新しい分類はスパインの成長、安定化、消失過程を考慮したものであり、従来の分類よりも生物学的な意味を持たせやすい所が特徴である。更に(3)についても実験を進め、蛍光相関のシグナルをスパイン内部の微小体積から得ることで、細胞質内での拡散を阻害する構造の検出が可能であることを示せた。更に(1)については、これまで用いてきた構造化照明の手法に加えて、走査型レーザー顕微鏡で超解像を得る手法と組織の透明化を組み合わせることで、スパインの微細構造のデータを組織標本からも得ることが出来ることを見出した。これらの技術はスパインの形態と内部での分子動態を直接測定する技術として極めて有用であり、今後の研究ではこれらのツールを活用したスパインの機能解析に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度には柱として挙げた三つの研究項目について、それぞれ十分な進展が見られた。 (1)厚い標本での樹状突起スパイン形態の高解像度画像取得を目指した技術開発:構造化照明法を脳切片やスライス培養に適用するための技術基盤を検討した。収差により構造化照明では組織内部での解像度の向上は難しいことがわかり、レーザー走査型の光学系で超解像を得られる手法を用いて検討を更に行った。その結果、脳の透明化と屈折率調整を組み合わせた手法により、スパインの微細構造の情報を取得できることがわかった。 (2)多数のスパイン形態データを定量的・客観的に解析するための手法の開発:スパイン形態のデータを表面形状メッシュとして表現し、得られた形状データを用いた形態評価、クラス分けの方法論を検討し、スパイン形態の動的変化を加えて特徴空間内でスパインを分類することが有効な方法であることを見出した。 (3)分子動態に関するデータとスパイン形態のデータを統合するための方法論の探索:蛍光相関分光法(FCS)、ラスターイメージ相関分光法(RICS)のスパイン内部での分子動態の測定への応用を試みた。これらの方法によってスパイン内部の微小空間での分子動態を十分正確に測定できることがわかった。更に分子量の大きな分子特異的な拡散制限がスパイン内部で生じることも明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に行った研究を継続し、項目(1)と項目(2)については技術開発を完了させる。項目(1)については特にスパイン頭部に形成される凹面に着目し、凹面が広くシナプス前部との接触面積が広いスパインがより安定化されている、という仮説の検証を目指す。項目(2)については培養細胞でのスパイン分類を自動で効率良く行うパイプラインの構築を実施し、自閉症モデル動物などから調製した培養神経細胞のスパインにおける形態学的な変化を追求する。またLTPなどのシナプス可塑性の誘導によりスパイン形態がどのように変化するのかを構造化照明法により解析し、シナプス可塑性に最も密接に関係するスパイン形態の変化を抽出する。更に項目(3)では数理モデルとの対応付けにより、スパイン内部でアクチン線維が形成する拡散バリアのサイズを推定し、そのバリアによってどの程度の大きさの分子の拡散制限が引き起こされるのかを考察する。理論的に推定される拡散制限を受ける分子サイズが、実際にFCSやRICSで測定された動態抑制がかかる分子の大きさと対応するのかを検討する。さらに可塑性の誘導によるスパイン形態の変化を解析し、分子量の大きな分子、特に可塑性における情報伝達に関連した分子の動的な振る舞いがLTPなどにより変化するのかを検討する。
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Research Products
(23 results)