2018 Fiscal Year Annual Research Report
キチン繊維の3Dリアレンジメントが駆動する外骨格の変形
Publicly Offered Research
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
18H04758
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田尻 怜子 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員 (70462702)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クチクラ変形 / キチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではハエの幼虫において体表を覆うクチクラの変形によって全身体型の変化が引き起こされる過程に着目し、クチクラ全体のマクロな変形をクチクラ中のミクロな3D構造の変化によって幾何学的に説明することを目指している。まずクチクラ中のキチン繊維のnmスケールの3D配置の変化がクチクラ全体の変形に関わると予想し、ハエ幼虫クチクラにおけるキチン繊維の立体的配置の解析および立体的なモデルの作成を進めた。従来、クチクラ中のキチン繊維の可視化には電子顕微鏡による超薄切片・破断標本の観察が必要だったが、本研究領域の松尾グループ(大阪母子医療センター)との共同研究で、生体から取り出したクチクラをそのまま原子間力顕微鏡で観察することでキチン繊維の配置を可視化できた。クチクラ中のキチン繊維を簡便に観察することができる新たな方法となる。さらに、クチクラ中のキチン繊維の合板状の立体的配置についてモデルを作成し、これまでクチクラの電子顕微鏡解析によって得られていたパターンとの照合を進めた。これらの解析・モデル作成の結果、当初の想定とは異なりキチン繊維の配置は変化しないことが判明した。同時に、変形前のクチクラに見られるミクロンスケールの波打ちが引き延ばされることが、クチクラのマクロな変形を説明する主要な因子であると考えられた。クチクラの構成分子の分布を3Dで効率的に観察する方法についても試行錯誤を重ね、レーザー共焦点顕微鏡でクチクラの断面を高解像度で観察することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標としていたキチン繊維の配置の可視化・解析に成功し、キチン繊維の配置が変化しないことを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
クチクラの主成分であるキチンとタンパク質のうち、キチンは本研究で注目するクチクラの変形には関わらないことが明らかとなったため、今後はタンパク質に注目して研究を進める。クチクラの変形に必要であることが分かっているキチン結合性タンパク質Obstructor-Eについてクチクラ中での動態などを解析していく。現在までに樹立した、レーザー共焦点顕微鏡でクチクラの断面を高解像度で観察する手法を用いて、研究を進める。
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Research Products
(2 results)