2018 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の回転運動と3次元フローを幾何学的に制御する
Publicly Offered Research
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
18H04760
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川口 喬吾 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 理研白眉研究チームリーダー (00787319)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自発的に運動する要素がより集まって生じるマクロな現象の特徴づけを行うことで、多細胞生物の発生や恒常性ダイナミクスにおいて普遍性のある物理法則を探求する。具体的には、マウスの神経幹細胞の培養皿上での挙動に着目し、細胞集団が特定の方向に回転流を生むメカニズムの解明と、3次元パターンにおける細胞流の制御を目標とする。 われわれは以前、神経幹細胞集団が液晶のような配列パターン(ネマチックパターン)を示すことを報告した。さらに、神経幹細胞を特定の境界条件の中で培養した際、境界付近で細胞集団が特定の方向に流れ、全体として回転流を生むという現象(このように鏡像反転対象でない性質をキラルという)を見つけている。 本年度は、神経幹細胞の形状観察や細胞接着観察のための蛍光タンパク遺伝子導入株を作成し、それらを用いた長時間培養観察を行うことに成功した。また、境界の設定以外のさまざまな条件下でも同様にキラルな集団運動が現れる可能性を探るべく、マイクロパターニング技術やマトリゲル(細胞外基質)を用いた方法により細胞を局在させる実験法を試し、いくつかの興味深い現象を発見した。特に、細胞液をマトリゲル(細胞外基質)に高濃度で懸濁し、ゲルから湧き出てくる細胞集団を長時間観察したところ、渦巻模様が生じることを見つけた。細胞集団の作るこの渦は常に同じ右巻き方向を示すが、アクチン重合阻害剤などを用いることで、ネマチックな挙動を損なうことなくキラルな性質だけを阻害することができることもつきとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年9月より研究室を立ち上げ、細胞培養・遺伝子導入・マイクロパターン作成の実験をスタートさせた。遺伝子導入法の確立に数か月を要した他は、進捗は順調である。細胞の回転流観察に関しても多数の条件を試し、良い結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子導入・顕微鏡観察・サンプル調整の技術がそろったため、データを取りためるとともに、画像解析を進める。
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