2018 Fiscal Year Annual Research Report
細胞極性と接着の制御による3次元細胞選別機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Discovery of the logic that establishes the 3D structure of organisms |
Project/Area Number |
18H04764
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
富樫 英 神戸大学, 医学研究科, 助教 (90415240)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 組織形成 / 細胞間接着 / 細胞骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者がこれまでに明らかにしてきた細胞選別と並び替え運動のメカニズムは、2次元にとどまらず3次元での組織形成にも密接に関わっていると考えられる。本研究では、匂いの知覚に働く嗅上皮で見られる偽重層上皮の層形成を、細胞自身の移動によるZ軸方向への細胞選別と捉え「1細胞内の接着力の偏り」と「細胞間の接着力の差異」の2つの要素によって立体組織内での細胞選別を制御する分子メカニズムの解明を目指す。嗅上皮の発生の際には、単層の基底細胞から分化した嗅細胞や支持細胞が頂端側に向かって移動することで、3層の偽重層上皮を形成する。これまでの層形成過程の観察から、嗅細胞内の接着分子の局在の偏りが、頂端側に向かう細胞の割込みによる移動を駆動し、嗅細胞と支持細胞の接着力の差異が層ごとの細胞の住み分けを制御するというモデルを考え、これを検討している。本年度は、嗅上皮組織培養と3次元細胞選別実験の経時観察を行うための実験系を構築し、細胞選別に伴う並び替え運動の際の細胞接着分子と細胞骨格の動態解析を行ってきた。まず嗅細胞、支持細胞と同じ組合せの接着分子ネクチン、カドヘリンを発現するモデル細胞を作成し、これらの細胞を用いて割込みによるモザイクパターンを形成させる細胞選別実験を行った。この実験ではカドヘリン、カテニン分子やアクチン、ミオシン分子にEGFPあるいはmCherry標識を付け、割込みによる並び替え運動の過程で接着分子と細胞骨格を同時に高解像度で可視化し、分子動態の比較と観察を行った。その結果、2種類の細胞間で割込みをおこして並び替えを起こす際には、割込みを起こす細胞と割込まれる細胞の間で辺ごとにカドヘリン分子とミオシン分子が非対称な偏りが一過的に生じることが明らかになり、ネクチンがこれらの偏りに関与することが初めて明らかになった。現在、この偏りを作り出す分子メカニズムを検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって得られた結果は、従来考えられていたモデルとは大きく異なるものであった。すなわち、異なるネクチンを発現する細胞間での割込みの際には「接着力」の強い面が伸長する一方、「接着力」の弱い面が「張力」によって収縮することで、細胞の割込みが引き起こされるというモデルが示されている。このモデルでは、割込む細胞と割込まれる細胞との間につくられる境界面の接着力は対称に分布すると考えられていた。しかし、今回の観察から得られた結果は、割込む細胞と割込まれる細胞との間につくられる境界面の接着力は対称ではなく、割込む細胞のヘテロフィリックな2辺の接着面のうち1辺にはカドヘリン・カテニン複合体が強く局在するのに対し、もう1辺の接着面には弱いという非対称な接着力の分布が見られるという、従来の予想を覆すものであった。細胞の割込み(Intercalation)は形態形成運動の一つとされ、多様な発生過程に関与することが知られている。従来の予想とは異なる形での接着力の偏りを作り出す分子メカニズムを明らかにすることができれば、形態形成の新たな基本原理の理解につながるだろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの観察によって、異なるネクチンを発現する細胞が相互に割込む過程では、接着分子が多く集積する辺と、集積しない辺が一過的に現れ、並び替えに働くことがわかった。今後は、ネクチンがカドヘリンやミオシン分子の偏りを生み出し、割込みを引き起こすメカニズムについて、培養細胞とともにマウス嗅上皮の組織培養も用いて検討を進める。 培養細胞を用いた実験では、接着分子と細胞骨格の相互作用に働くアファディンやαカテニンの変異分子を用いることで、接着力の偏りを生み出すドメインおよび関連分子を同定する。また、カドヘリン分子の局在が多い細胞辺において、ミオシン分子の局在が相対的に少ない傾向が見られた。カドヘリンは、裏打ちのカテニンやビンキュリンを通じてミオシンと物理的に結合することが知られている。そして、RhoやRhoキナーゼといった分子は、細胞間接着の制御とともに、ミオシンのリン酸化を介して張力の制御にも関与することが知られている。今後は、割込みにおけるこれらの分子の相互作用を検討するとともに、ライブイメージングで注目する分子のバリエーションを増やす増やすことにより「接着力」と「張力」の関係をより直接的に検証し、分子の偏りを生み出すメカニズムの全体像に迫る必要がある。また、数理モデルによる考察を行うことで、接着力の偏りが割込みを引き起こすメカニズムについても検討する。また、すでに嗅上皮の層形成において異常を示す遺伝子変異マウスを用いて、これら分子の相互作用を検討する。
|
-
[Journal Article] Hippo pathway controls cell adhesion and context-dependent cell competition to influence skin engraftment efficiency2019
Author(s)
Miki Nishio, Yousuke Miyachi, Junji Otani, Shoji Tane, Hirofumi Omori, Fumihito Ueda, Hideru Togashi, Takehiko Sasaki, Tak Wah Mak, Kazuwa Nakao, Yasuyuki Fujita, Hiroshi Nishina, Tomohiko Maehama, Akira Suzuki
-
Journal Title
The FASEB Journal
Volume: 33
Pages: 5548-5560
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-