2018 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科の自他花粉識別における生理応答機構の可逆性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
18H04776
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 壮太 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (90716713)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 受粉 / 自家不和合性 / シグナル伝達 / 可逆性 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
1)自家不和合性の可逆的細胞応答反応の解明 これまでの公募研究でライブイメージングによってアクチン繊維の動態が細胞の可逆的な応答反応と連動していることを明らかにしてきた.今期ではまずSRKのイメージングラインを作成した.SRKに複数の種類の蛍光タンパク質(eCFP, Venus, mCherry)、発光タンパク質(nano-luc)そして万能タグhalo-tagを融合したコンストラクトを作成し植物に導入した.その結果eCFP、nano-lucとhalo-tagについて機能的なSRKを発現する系統を作成することができた.さらに交雑によってeCFPとhalo-tagを同時に持つ系統を作成し、SRKを異なる二色で同時にラベルする実験系の検討を行った.生化学あるいは構造生物学的な知見よりSRKはSP11結合時にダイマー化して活性化すると考えられている.そこで、二色の共局在性によってその状態を検出できるのではないかと仮説立てた.すると実際に自己花粉を受粉するとeCFPとhalo-ligandであるTMRのシグナルの共局在率が上がるという結果が得られてきた. 2)局所細胞応答が集団の進化に与えるインパクトのシミュレーション 今期は数値計算を用いた既存の数理モデル(Billiard et al 2007)を改良し、自家不和合性の進化理論を考える上での基盤を作った.このモデルを用いて、まずはこれまで分野で長年の謎として残ってきた問「どのようにして新しいSハプロタイプが誕生するのか」について検証した.その結果、自家不和合性によって100%自己の花粉がリジェクトされる状況では新しいSハプロタイプは生じ得ないのに対し、70-90%程度の確率でリジェクトする状況において新しいタイプが誕生しやすいという結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SRKの二色ラベル系統については、昨年度立案通り作成することができた.また、数理モデルに関しては短期間で作成したにも関わらず、最新の数理解析ライブラリを用いる事で先行研究を改良したものができたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ライブイメージングに関しては予備的な結果をさらに検証し、SRK活性化の持続時間の検証を行いたい.一方、自己受粉を行ったのちに柱頭サンプルのトランスクリプトーム解析を行い細胞の遷移状態をマクロ視点で捉えられないか検証を行った.しかし、発現変動する遺伝子が少なく、そもそも転写産物のレベルで状態遷移を検出することが難しい可能性が考えられた.マクロ的に捉える研究についてはメタボロミクスなどの導入を検討している. 数理モデルについてはこれまでの集団遺伝学モデルに細胞反応を導入する計画である.どこまで詳細(時空間的)な細胞反応モデルを入れるのかについては計算コストとの兼ね合いもあり挑戦的であるが、共同研究者と相談しながら進める.
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Research Products
(2 results)