2018 Fiscal Year Annual Research Report
篩部で中継される成長・環境応答シグナルの解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
18H04777
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
打田 直行 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (40467692)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 篩部 / シグナル / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物である高等植物が全身的に協調した成長を達成するためのシグナルの実体や作用メカニズムには不明な点が多い。茎の協調的な伸長の制御では、機能冗長的な2つの分泌型ペプチドEPFL4とEPFL6が、その受容体のERECTA (ER)によって篩部伴細胞で受容されると、篩部伴細胞から茎の伸長を導くさらなる作用が発生すると考えられている。そこで、この篩部伴細胞で茎伸長のために作動する仕組みの解析を行った。まず、これまでに、EPFL6シグナルをOFFからONに切り換えた際の遺伝子発現の変動をRNA-seqを実施してあったので、今年度、それら変動遺伝子の中でも、特に篩部から周辺領域に遠隔作用を発揮できる可能性を持つ因子を約20個抽出し解析を行った。これらの因子をer変異体においてそれぞれ過剰発現した植物体の作成は順調に進んでおり形質転換体は予定通りに確立できた。次は、茎の伸長に影響を及ぼすかどうかを検証する予定である。また、機能欠損体の単離や作成、解析も進めた結果、茎伸長に明確な異常を持つ変異体は未だ見出してはいないが、機能冗長性の高い遺伝子が多いことから、現在は遺伝子ファミリーの多重変異体の作成を進めている。 また、本課題では、epfl6変異体の新たな機能の探索も目的としている。解析の結果、epfl6変異体は低温下では受粉が達成できず、その際には花器官が十分に成長できないこと、一方で、このファミリーの多重変異体は通常温度下でも花器官の成長不全のために受粉できないことが判明した。すなわち、通常温度下においてはファミリーが機能冗長的に花器官の成長に関わり、中でもEPFL6は低温時の貢献が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
茎伸長に関しては、着目遺伝子の過剰発現体と多重機能欠損体の作成が順調に進んでおり、また、epfl6変異体の新機能の探索に関しても、EPFL6やそのファミリーが花器官の成長の観点を見出した。以上のことから、現在までの進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
茎伸長の解析では、着目している因子群に関してまずは確立が進んできた過剰発現体の茎の表現型の解析を進める。多重機能欠損体に関しても、ラインが確立され次第に表現型の解析を開始する。花器官の成長に関しては、その表現型のさらに詳細な解析を進めるとともに、茎伸長と同じ下流遺伝子群が作動している可能性も考慮し、茎伸長の観点で整備している過剰発現体や多重機能欠損体に関しても花器官の成長にも着目した観察を行う。これにより、茎伸長の仕組みが花器官成長でも共通して重要であるのかを検証する。
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Research Products
(9 results)