2018 Fiscal Year Annual Research Report
病原糸状菌の局所的侵入に対し自律応答する植物生体防御システム
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
18H04780
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高野 義孝 京都大学, 農学研究科, 教授 (80293918)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 局所的侵入 / 侵入後抵抗性 / エフェクター / トリプトファン / 植物病原糸状菌 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 病原糸状菌の局所的侵入に応答し活性化される抗菌反応経路の特定 植物病原糸状菌の局所的な侵入に対し、侵入後抵抗性と呼ばれる抵抗反応を植物は活性化するが、その詳細は不明な点が多い。今回、CYP71A12 がその生合成に関わるIndole-3-carboxylic acidとその類縁体(以下、ICAsと総称)が、クワ炭疽病菌への侵入後抵抗性に関与することを明らかにした。さらにCYP71A12依存的なICAsの合成が、アブラナ科野菜類炭疽病菌およびアブラナ科黒すす病菌に対する侵入後抵抗性にも関与することを発見した。この侵入後抵抗性はbak1-5変異の導入によって低下するが、bak1-5変異導入によっても、ICAsおよびトリプトファン由来のカマレキシンの病原菌侵入時の蓄積量は低下しないことが判明し、bak1-5変異によって減退する抗菌経路はこれらトリプトファン由来の抗菌経路ではないことが明らかとなった。さらにbak1-5変異によって低減する抵抗性経路は抗菌性タンパク質遺伝子の発現を制御していることを明らかにした。
2. PAMP によってICAs などを蓄積するnsl1変異体に対するサプレッサー変異体の解析 nsl1変異体はflg22などのPAMPの処理によってICAsおよびカマレキシンを蓄積する。このことは、nsl1変異体においてはPAMP処理によって侵入後抵抗性経路の一部が活性化することを示している。そこで、このnsl1変異体のサプレッサー変異体をスクリーニングし、その解析をおこなった。これまでにnsl1変異体にEMS処理をおこない、そのM2植物5,292個体をスクリーニングし、その結果、24のサプレッサー変異体を同定している。現在、MutMap解析による原因遺伝子の探索をおこなっており、EIN2、GLU1などの遺伝子をサプレッサー変異体の原因遺伝子として同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、病原糸状菌の侵入に応答しBAK1が活性化する抵抗性経路は、GLIP1などの抗菌性タンパク質をコードする遺伝子の発現を誘導することを明らかにした。一方でICAsの合成などをつかさどる経路は、BAK1に依存せず、シロイヌナズナが病原菌の局所的侵入をうけて活性化する機構は、BAK1依存的経路とBAK1非依存的経路を内包することが判明し、侵入後抵抗性のアウトラインを明らかにすることに成功した(現在、論文を投稿中)。また、PAD3プロモーターにGFPを結合したコンストラクトを導入したシロイヌナズナのレポーターラインの作出も完了している。さらに侵入後抵抗性に関わる新たな因子を同定するために、nsl1変異体のサプレッサー変異体のスクリーニングを実施した結果、24のサプレッサー変異体の同定に成功し、さらに複数の原因遺伝子をすでに同定できている(EIN2、GLU1など)。一方、病原菌による抑制機構に関しては、エフェクターNIS1が、BAK1、BIK1などの宿主のパターン認識受容体システムの因子に干渉し、植物の局所的防御応答を抑制することを明らかにしている。以上のように、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナnsl1変異体に対するサプレッサー変異体の原因遺伝子の同定、および同定された原因遺伝子の機能解析をすすめ、病原菌の侵入により局所的に活性化する侵入後抵抗性の分子メカニズムに関する新たな知見を得る。本年度、エチレン経路に関わるEIN2遺伝子が原因遺伝子として同定されており、侵入後抵抗性とエチレン経路の関連について調査していく。また、pen2変異体に対するサプレッサー変異体スクリーニングも推進していき、bak1-5変異に対して感受的な抵抗性経路、および非感受的抵抗性経路の上流因子の探索に挑戦する。さらに、本年度に作成したPAD3プロモーターにGFPを結合したコンストラクトを導入したシロイヌナズナのレポーターラインを用いることで、侵入後抵抗性の活性化プロセスの時空間解析をすすめていく。また、NIS1など植物病原糸状菌のエフェクターによる侵入後抵抗性の抑制について研究を実施していく予定である。
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[Journal Article] Conserved fungal effector suppresses PAMP-triggered immunity by targeting plant immune kinases2019
Author(s)
Irieda H, Inoue Y, Mori M, Yamada K, Oshikawa Y, Saitoh H, Uemura A, Terauchi R, Kitakura S, Kosaka K, Singkaravanit-Ogawa S, and Takano Y.
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.
Volume: 116
Pages: 496-505
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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