2018 Fiscal Year Annual Research Report
水陸両生植物の水環境への適応に寄与する環境応答統御システムの解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
18H04787
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
木村 成介 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40339122)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 表現型可塑性 / 葉 / 水草 / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 水没による気孔形成の抑制機構の解析 R. aquaticaは、水没すると葉の形態を大きく変化させるとともに、気孔の形成が抑制される。4週間生育したR. aquaticaを水没させると、展開中である5mm 程度の若い葉において水没後4日目には顕著な気孔形成の抑制が観察された。一方、転写レベルでの応答はさらに早い段階で起こっており、SPCHの発現抑制は水没から1時間以内で起こってた。このような気孔形成の抑制や気孔関連遺伝子の発現抑制はシロイヌナズナを水没させても観察されなかった。R. aquaticaとシロイヌナズナで、水没後1時間での発現応答をRNA-seq解析で調べたところ、R. aquaticaで特異的に転写量が4倍以上増加していた遺伝子は180 あり、その中で転写因子は9つあった。興味深いことに、暗条件下で水没させても気孔形成の抑制は観察されず、SPCHの発現抑制も起こらなかった
2 光質が葉の形態に与える影響の解析 R. aquaticaは、水没、温度、光強度に応答して葉の形態を変化させる。環境をどのようなメカニズムで感知しているのかについては不明であるが、最近、光質(R/FR)によっても葉の形態が変化することを発見した。これまでの研究により、フィトクロムによる光受容機構が環境感知に関与していることが示唆されているため関連を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的としている水没に応答した葉の形態変化の解明については、トランスクリプトーム解析をすすめており、順調に研究がすすんでいる。また、気孔形成の抑制機構の解明については、SPCH遺伝子の発現抑制が水没直後(1時間後)におこっていることを明らかにすることができた。現在、SPCHの発現抑制のメカニズムをシロイヌナズナとの比較トランスクリプトーム解析により明らかにしようとしており、研究は順調に進んでいる。また、研究の過程で水没による気孔形成の抑制には、光が必要であることを発見した。この減少は、R. aquaticaが水没をどのように感知ししているかを明らかにするために、重要な知見である。以上、本年度の研究成果を総括すれば、研究はおおむね順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、R. aquaticaのゲノム基盤を整えることができただけでなく、水没などの環境変化への応答に関わる遺伝子ネットワークが明らかにできつつある。今後は、同定された遺伝子の機能解析をすすめるとともに、近縁種との比較ゲノム解析などにより、水環境への適応に寄与する環境応答統御システムを明らかにし、また、進化過程を明らかにしたい。 気孔抑制の制御機構については、SPCHの発現が水没後 1 時間以内に抑制されていることから、水没シグナルが早期に直接SPCHの転写を抑制している可能性が高い。今後はSPCHの発現抑制機構を明らかにするとともに、光条件と水没感知の関係を明らかにして行く。
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Research Products
(18 results)