2018 Fiscal Year Annual Research Report
イネのパターン誘導免疫と免疫プライミングの分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative system of autonomous environmental signal recognition and memorization for plant plasticity |
Project/Area Number |
18H04789
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
川崎 努 近畿大学, 農学部, 教授 (90283936)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | パターン誘導免疫 / イネ / 免疫プライミング |
Outline of Annual Research Achievements |
イネのユビキチンリガーゼであるOsPUB44は、真菌の構成成分であるキチンを認識するCERK1/CEBiP受容体の下流で、免疫を誘導するポジティブレギュレーターとして働いている。先行研究により、新奇免疫タンパク質として同定したPBI1は、OsPUB44に相互作用し、キチンに応答してOsPUB44を介して分解されることが明らかになっている。さらに、PBI1は、イネの免疫誘導の鍵因子として働く転写因子WRKY45に相互作用することから、キチンに応答したPBI1の分解がWRKY45の活性化を誘導しているのではないかと示唆された。そこで、WRKY45の結合配列であるW-boxをもつプロモーターの下流でルシフェラーゼが発現するレポーター遺伝子を用いて、WRKY45の転写活性を解析したところ、WRKY45の転写活性はPBI1の共発現により抑制されることが明らかになった。したがって、PBI1は、通常状態ではWRKY45の活性抑制に働いていると考えられる。さらに、これを検証するため、CRISPR/CAS9システムを用いて、PBI1ノックアウト変異体を作出した。PBI1ノックアウト変異体では、WRKY45のタンパク質レベルでの上昇が検出されたころから、PBI1による抑制が解除されたことで、WRKY45の転写の自己制御による転写の上昇が生じていると考えられた。この結果と一致して、PBI1ノックアウト変異体では、WRKY45過剰発現体で見られる植物体の矮性化や白葉枯病菌に対する抵抗性の上昇が検出された。また、これらの結果は、PBI1がWRKY45を介した免疫プライミングに関与していることを示唆している。以上のことから、非ストレス条件下では、PBI1がWRKY45を抑制しているが、キチン認識に伴い、PBI1が分解され、WRKY45が活性化されると推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非ストレス状態では、PBI1がWRKY45の転写活性を抑制していること、PBI1の分解がWRKY45の活性化を誘導していることを明らかにするとともに、PBI1ノックアウト植物体の解析により、その結果をサポートするデータが得られている。従って、本研究は当初の予定通りに順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
PBI1によるWRKY45の抑制機構を明らかにするため、PBI1が結合するWRKY45のタンパク質ドメインの決定を行うとともに、PBI1がWRKY45のDNA結合活性に影響を及ぼすかについて解析を行う。また、PBI1やOsPUB44のノックアウト変異体およびPBI1過剰発現体を用いたRNAシークエンス解析により、OsPUB44 やPBI1の機能を検証するとともに、本シグナルネットワークについて詳細に解析を行う。
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Research Products
(12 results)