2018 Fiscal Year Annual Research Report
Transomics analyses on metabolic adaptation against cancer cachexia
Publicly Offered Research
Project Area | Transomic Analysis of Metabolic Adaptation |
Project/Area Number |
18H04810
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河岡 慎平 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 特定准教授 (70740009)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん悪液質 / 代謝 / マウス / トランスクリプトーム / メタボローム / インフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
がん悪液質は、がんが分泌する炎症性サイトカインやホルモンなどによって引き起こされる、全身性の代謝障害である。がん悪液質の代表的な症状として、脂肪や筋肉、体重の減少が知られる。がん悪液質はがん患者のQuality of Life (QOL) を損ない、生命予後を悪化させることから、その治療法の開発が望まれている。しかし、がん悪液質の詳細なメカニズムは未解明であり、そのことが一因となり、がん悪液質の有効な治療法は現在では存在しない。2人に1人ががんになる、という昨今にあって、根治できないようながんとどのように付き合っていくべきか、というのは重要な社会的問題であると考えられる。
申請者のこれまでの研究によって、個体によるがん悪液質へのアダプテーションなのではないか、という現象を発見した。さらに、その中核となりうる宿主側の遺伝子や代謝物の候補を同定した。本研究では、この発見をさらに発展させることにより、がん悪液質という複雑な現象を代謝アダプテーションの立場から捉えなおすことを目指している。
2018年度は、非担がん・担がん状態の野生型・遺伝子欠失マウスの宿主臓器に対するマルチオミクス解析をおこなった。まず、非担がんと担がん状態を比較することで、がんによる全身的な代謝変容の全体像を明らかにしつつある。また、これまでに作出した遺伝子改変マウスのデータから、非担がん状態の遺伝子改変の影響を明らかにした上で、担がん状態における遺伝子改変の影響を記載した。これらを比較することで、がんに対するアダプテーション現象と思われる分子的なネットワークが判明しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度では、我々が独自に収集したマウス宿主臓器検体のオミクス解析ならびにインフォマティクス解析を計画した。これまでに、計画したオミクス解析のほとんどを実施することができた。また、インフォマティクス解析により、「がん悪液質という複雑な現象を、代謝アダプテーションの立場から捉えなおすこと」という当初目的にかなうような結果を得ることもできている。そのため、計画がおおむね順調に進展している、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究結果から、担がん個体において観察される代謝の変容を、これまでに同定した宿主遺伝子に依存的なものとそうでないもの、代謝アダプテーションの現れでありうるものとそうでないもの、というように分類することができた。2019年度は、これらの解析をさらに進めるとともに、数理解析によって、多階層オミクスデータの関連付けをおこなう。
また、2018年度の結果をもとに、さらに計測をおこなうべきサンプル・階層があることもわかってきた。2019年度は、これらの新しい計測にも取り掛かる。
さらに、2018年度に得られた結果の一部を培養細胞系に落とし込み、マウス個体で観察されているアダプテーション現象のより詳細なメカニズムに関する研究も展開する。
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Research Products
(1 results)