2018 Fiscal Year Annual Research Report
胸鰭の鰭条本数の個体間ゆらぎ要因と種間形態多様性
Publicly Offered Research
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
18H04811
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 宏治 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70261550)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 鰭条 / ゆらぎ / 形態形成 / 形態進化 / 指 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「前肢の相同器官である胸鰭における、種内で鰭条の本数に部位的制約をもってゆらぎを起こす外的要因とその要因が標的とするカスケードを特定する」ことを目的とし、さらに、鰭条本数のゆらぎを生じる要因・標的カスケードと特殊化した鰭条骨格や四足動物の指本数多様性形成との関係を示すことを目指している。また、これらにより「種内でゆらぎやすい仕組みを用いていることで、同一部位から作られる構造の種間多様性や形態特殊性を生み出す可能性を高めている」という仮説を検証したいと考えている。 これらの目的を達成するため、2018年度は、まず、鰭条本数のゆらぎが起こる時期と領域を特定するため、鰭条とそれを支える担鰭骨(一般に四足動物の四肢内骨格と相同と考えられている)の発生過程を詳細に観察し、鰭条本数にゆらぎが生じる時期と鰭条と担鰭骨(特にdistal radialsと呼ばれる遠位担鰭骨)との接続の形成過程を明らかにした。また、鰭条本数のゆらぎが生じる時期が明らかとなったことから、その時期に鰭条形成領域で領域特異的に発現する遺伝子をゼブラフィッシュのGal4-UASエンハンサートラップ系統リソース(国立遺伝学研究所川上浩一研究室)から複数同定し、そのうち鰭条本数のゆらぎに関連が予想されるshhシグナルカスケードに関わる遺伝子発現について、詳細な観察を行った。一方で、これまでいくつかの系統における鰭条数ゆらぎを観察してきたのに加えて、近交度の高い近交系ゼブラフィッシュを用いて、鰭条数ゆらぎを観察したところ、近交系でもゆらぐことを見出した。このことは、鰭条数の部位特異的ゆらぎには、遺伝学的要因のほかに非遺伝学的な要因も関与することを示唆している。これまでに得られた研究結果をすでに論文としてまとめ、投稿する準備がほぼ整ったところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鰭条本数のゆらぎの原因となる時期・過程の特定を終え、これまでに得られた結果についての論文作成もほぼ完成しており、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのところ研究は順調に進展しており、大きな問題も発生していない。今後、ゆらぎを変化させる摂動実験において、当初より候補としていた環境要因(餌(飢餓)、温度、飼育密度)が鰭条本数のゆらぎに影響を与えない可能性も考慮し、鰭再生過程におけるゆらぎの変化の解析や、トランスクリプトーム解析(RNA-seq)など、別の解析手法も視野にいれつつ解析を進める方針である。
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Research Products
(10 results)