2018 Fiscal Year Annual Research Report
深層ネットワークを援用した表現型制約と表現型進化原理の探索と普遍構造の探求
Publicly Offered Research
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
18H04814
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 徹也 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (90513359)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | T細胞 / クローン選択 / 深層強化学習 / T細胞レパトア / 自然勾配 / クローン分布 / 学習ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は深層強化学習の枠組みを利用して、T細胞を中心とした獲得免疫系の強化学習による定式化を行った。まず免疫系が行っている病原体への応答を強化学習として表現した。次に抗原提示細胞に提示される抗原パターン、T細胞クローン集団、自然免疫細胞集団の関係が作るネットワークに着目し、これをT細胞クローンの集団をパラメータとした方策の実装として捉えた。この実装がQ学習のQ関数と対応付けられることを明らかんした。また勾配法によりT細胞クローンを変化させた学習則を導出した。モデルの生物的意味から必然的に課される対称性を考慮することで、T細胞のクローン選択理論と類似の増殖率の変化による学習則が自動的に導かれた。 次に、シミュレーションによってこの学習則が実際に変化する病原体のパターンを学習可能であることを確認した。学習過程に依存して学習後のT細胞クローンの分布にはある程度のばらつきが見られたが、同一の性質を持つ分布に収束することが示唆された。この分布を、実際に実験的に得られているクローン分布と比較した。データに依存して極めて良い一致が見られるものと、学習のゆらぎでは説明できない大きな乖離があるものがあることがわかった。個々の個体が経験する病原体の種数が異なる場合のシミュレーションを行うことで、経験する病原体数の変化が大きく学習後のクローン分布を変化させうること、そしてそれが実験データを説明しうる1つの仮説になることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通りの計画で進行しており、論文も投稿された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は獲得免疫系を対象に得られたモデルを更に発展させて、胸腺選択などより免疫学的に妥当な知見を加えるとともに、細胞複製系にターゲットを当てた理論の構築と応用を行う。具体的にはリボソームを中心とした複製ネットワークを考え、そのリソース最適化の観点から進化的拘束と適応の関係を調べる。またモデルの表面的な詳細によらない普遍構造を取り出すため、深層強化学習の変分構造に着目して情報や熱力学構造の観点から得られた結果を捉える理論的枠組みを構築する。
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