2018 Fiscal Year Annual Research Report
Revealing molecular mechanisms that discriminate mutualistic and pathogenic lifestyles of plant-associated fungi
Publicly Offered Research
Project Area | Evolutionary theory for constrained and directional diversities |
Project/Area Number |
18H04822
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
晝間 敬 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20714504)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 揺らぎ / 共生菌 / 寄生菌 / シロイヌナズナ / 糸状菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物と微生物の相互作用研究において、寄生(病原)性と共生性の境を理解することは重要命題の一つであるが、これまで特に分子遺伝学的な知見が非常に乏しい。本研究では、植物根に感染する糸状菌が、同種でありながら同一宿主に対して片や共生型、片や寄生型という好対照的な進化の方向性を決定する因子の同定・解析を目的とする。糸状菌Colletotrichum tofieldiae (Ct)は様々な地域・植物から単離されている。モデル植物シロイヌナズナから単離されたCtは貧栄養条件下でアブラナ科植物の生長を促す(Hiruma et al., Cell 2016)。一方で、日本で単離されたCtの1株はシロイヌナズナの生長をむしろ阻害する寄生型菌であることを見出しており、異なる地域・植物への適応進化の結果、Ct株間の感染戦略は同種という制約のもとでも共生型から寄生型まで幅広く変化することが推察された。 本年度は、第一に、様々な環境に適応したCt株を調査した結果、共生型や寄生型の菌株に加えて、植物生長の促進効果も示さないものの阻害効果も示さない中立型のCt株を同定した。Ct種の近縁種も調査したところ、複数種類の寄生型菌に加えて、1種類の共生型菌を新たに同定した。 第二に、対照的な感染戦略を示す菌株のゲノム配列をPacbioとIlluminaを用いたゲノムシークエンスにより取得した。現在は、それぞれの感染戦略特異的なゲノム領域を絞り込み中である。 第三に、感染戦略が対照的な菌株が宿主植物に感染中の時系列トランスクリプトーム解析を行った。その結果、それぞれの感染戦略特異的に発現が変動する宿主・菌の遺伝子群を絞り込んだ。 第四に、共生型Ct株が病原菌化する変異体、及び、その共生能がさらに強まる変異体などにCtを感染させ、感染根からCtを再分離した。その後、各変異体に再接種する一連の流れを25回繰り返した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた以上に、多彩な感染戦略を取る菌株が同定できた。また、宿主感染中のトランスクリプトーム解析からも、感染戦略特異的な菌・植物遺伝子群の絞り込みが順調に進み、本年度中に一部因子の解析をスタートできた。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の項目を行う。 1.対照的な感染戦略を示す菌株のゲノム情報をそれぞれ取得し、比較ゲノム解析により菌株間での多様性及び相同性を示すゲノム領域(遺伝子)を同定する。 2.Ctの近縁種も含む菌株が宿主植物の根に感染中のトランスクリプトーム解析を行い、菌株間で遺伝子応答パターンが異なる遺伝子群を同定する。同時に、同一菌株の中で遺伝子発現が大きく揺らぐ遺伝子群にも着目し、菌株間での保存性を上記のゲノム情報も元に明らかにする。 3.1. , 2.で絞り込んだ進化速度の速い、もしくは、発現が大きく揺らぐ遺伝子群が対照的な感染戦略を示す要因であるかを検証するため、植物・菌の候補遺伝子の欠損変異体を作出し、変異体における感染行動を記述する。感染戦略を示す要因であることが証明された遺伝子群については、各菌が宿主に感染中の遺伝子発現を調査してその揺らぎを定量化する。そして、揺らぎパターンからその菌の感染戦略を逆に推測できないかどうか調査する。 4.共生型Ct株が病原菌化する変異体、及び、その共生能がさらに強まる変異体などにCtを感染させ、感染根からCtを再分離する。その後、各変異体に再接種する一連の流れを継続する。宿主植物を介して特定の進化圧を人工的に与えることで、各Ct株の共生能に与える影響を調査する。顕著な変化が認められた菌株を中心に、ゲノム情報を取得し、比較ゲノム解析を行う。
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Research Products
(4 results)