2018 Fiscal Year Annual Research Report
Generation and convesion of stem cells in two-step shoot regeneration system
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of pluripotent stem cells underlying plant vitality |
Project/Area Number |
18H04830
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 宗隆 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50202130)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / カルス / シュート再生 / 根端分裂組織 / シュート頂分裂組織 / 幹細胞 / オーキシン / サイトカイニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物幹細胞の新生と転換のメカニズムを解き明かすことを目指して、高濃度の2,4-Dをオーキシンとして含むカルス誘導培地(CIM)でシロイヌナズナの胚軸断片を培養してカルス化させた後、サイトカイニンの2iPを多く含むシュート誘導培地(SIM)に移植して不定芽のシュート頂分裂組織(SAM)を形成させる、2段階式のシュート再生系において、内生IAAに着目した解析とTBP関連因子のBTAF1に着目した解析を進めている。2018年度には、それぞれの解析で次のような成果が得られた。 IAAの生合成や極性輸送を阻害する薬剤をCIMに添加すると、カルスの成長と不定根形成能が抑えられると同時に、シュート再生能が昂進した。このシュート再生能は、根端分裂組織(RAM)制御遺伝子のLBD16・18およびPLT7と正に、オーキシン情報伝達抑制遺伝子のIAA32~34と負に、相関していた。これより、内生IAAによってカルスのオーキシン応答が却って抑えられ、RAM型幹細胞の状態が変化している可能性が示唆された。また、胚軸断片をCIMで培養すると、内生IAAレベルは2,4-D依存的に一旦減少し、その後増大すること、IAA生合成阻害剤添加によりこの増大が抑えられることがわかった。 rgd3はBTAF1のC端部欠落により多面的な温度感受性を示す変異体である。シュート再生時のBATF1の役割を包括的に捉えるため、SIMに移植し制限温度下で培養した野生型とrgd3の外植片について、RNA-seq解析を行った。この結果から、シュート再生過程でBTAF1は、サイトカイニン情報伝達やRAM的性質の喪失には関与せず、SAM構築に選択的にはたらいていることが示された。BATF1ネットワークの遺伝学的解析に向けて、変異原処理を施したrgd3の後代をスクリーニングし、抑圧変異体候補株を30株以上選抜した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
rgd3変異体のシュート再生のトランスクリプトーム解析など、2018年度に予定していた研究計画の主要な部分は実行することができた。rgd3抑圧変異体の単離は確実性の低い計画であったが、多数の候補株が見つかっており、大いに希望がもてる状況となっている。遺伝子発現の空間的パターンの解析などで手間取ってはいるものの、想定の範囲内であり、全体としては概ね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
IAA生合成阻害剤の効果やRAM制御遺伝子の発現変動などから、カルスのシュート再生能はRAM型幹細胞の状態を反映しており、この状態を内生IAAが変化させると推定している。こうした変化を総体として捉えるには、やはり個別の遺伝子発現解析よりも、遺伝子発現のプロファイリングが有効であると考えられるので、IAA生合成阻害剤処理等によりシュート再生能の異なるカルスを作り出し、これらのRAN-seq解析を新たに行うことを予定している。得られたデータは、公開されている側根形成過程のトランスクリプトームデータと照合し、側根原基発達段階におけるRAMと関連づけながら分析する。カルスと側根原基との比較は、RAM制御遺伝子の空間的発現パターンについても行う。また、2,4-DとIAAの作用の違いも、どのようなメカニズムによるのか、きわめて興味深い。この問題については、主に薬理学的方法により検討し、糸口を探る。 シュート再生における幹細胞の転換とBTAF1の役割に関しては、rgd3変異体を用いて得られたRNA-seqデータの詳細な分析を進めるとともに、できるだけ早期にrgd3抑圧変異体を確立し、その責任遺伝子を同定して遺伝学的に追究していく。幹細胞の転換過程を追跡するために、SIM移植に応答したRAM制御遺伝子とSAM制御遺伝子の空間的発現パターンの変遷を明らかにすることも重要課題と考えている。
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