2018 Fiscal Year Annual Research Report
受精・胚発生過程における染色体維持装置形成による新生幹細胞維持機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of pluripotent stem cells underlying plant vitality |
Project/Area Number |
18H04834
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
武内 秀憲 名古屋大学, 高等研究院(WPI), 特任助教 (10710254)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | CENH3 / セントロメア / 染色体 / シロイヌナズナ / 胚発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
根源的な“幹細胞”とも言える受精卵が動的に分裂・分化し正常な胚発生を進めるためには、受精卵・初期胚において様々なエピゲノム情報が再編成される必要がある。本研究では被子植物シロイヌナズナを用いて(1)CENH3のセントロメア領域への新規積み込み機構の解析、(2)受精・初期胚発生時におけるエピゲノム動態の解析を行い、植物における染色体維持装置形成の仕組みとそれを制御するエピゲノム因子の解析を進めた。 (1)様々な植物のCENH3の配列を比較することで、双子葉植物であるシロイヌナズナのセントロメアに運ばれるために重要なCENH3のドメインを絞り込み、セントロメア積み込みに重要なアミノ酸も同定した。また、CENH3を認識するヒストンシャペロン等の探索を進め、CENH3と結合し、CENH3機能に関連する可能性のある分子を同定し、受精・胚発生時における表現型を解析した。これらの解析により、植物のCENH3がセントロメア領域に運ばれ、機能するための特徴が明らかとなった。 (2)受精前の卵細胞と受精後の受精卵・初期胚で動的に変化するようなエピゲノムマークを同定・解析するために、卵細胞と受精卵の核・細胞膜に加えてエピゲノム因子も蛍光標識した植物株を作出した。この時、セントロメアやヘテロクロマチン領域の形成に影響を及ぼすエピゲノム変異体と組み合わせて準備を進めた。 今後、(1)と(2)の解析を進めるとともに、関連する分子の探索・同定も進める。得られる知見を基盤としながら受精・胚発生時の様子をライブ解析することで、染色体の維持や幹細胞性の新規確立に重要なエピゲノム動態の解明が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物ではほとんど解析されていなかったCENH3のセントロメア積み込み機構の一端を明らかにすることができ、CENH3を特異的に認識するシャペロン等の分子を同定する基盤が整ったと考えている。いくつかの候補因子の解析も進んでおり、CENH3の積み込みだけでなく、染色体の維持に関わる様々な仕組みも派生的に明らかになると期待される。またエピゲノム動態の解析のために、変異体や蛍光標識株の整備を進めることができた。一方で、受精時における表現型やエピゲノム情報の解析は遅れており、特にライブ解析に関しては解析技術の確立が難航している。今後は整備した株を用いて、透明化や固定染色を繰り返し行うことで十分な時間・空間解像度の情報を得て、受精時におけるCENH3を含むエピゲノムの動態を明らかにしていく。ライブ解析に関しても、技術基盤の確立を少しずつ進め、適した蛍光標識株が得られ次第、ライブイメージングによる動態の解析を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
植物では未同定であるCENH3特異的なシャペロンの同定に特に注力する。既に進めている逆遺伝学的手法で絞り込んだ候補の解析に加えて、生化学的手法による相互作用タンパク質の同定も行う。蛍光標識株の観察とノックアウト変異体の表現型解析により、CENH3のシャペロンだけでなく、その機能、染色体の維持に関わる因子も取りこぼしなく同定する。受精時におけるCENH3の新規積み込みやエピゲノム情報、それらに関わる因子の動態を調べていくと同時に、傷害や植物ホルモンに応答した細胞運命の転換時にも同様の変化が見られるのかを調べる。これにより、分化した細胞がリセットされる時と受精時における“幹細胞性”の新規確立・維持の仕組みの共通原理を探る。
|
Research Products
(8 results)