2018 Fiscal Year Annual Research Report
気孔幹細胞の極性形成と非対称分裂の仕組みの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of pluripotent stem cells underlying plant vitality |
Project/Area Number |
18H04835
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶋田 知生 京都大学, 理学研究科, 講師 (20281587)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 気孔 / 幹細胞 / 非対称分裂 / 極性 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
気孔を構成する孔辺細胞は、葉の発生初期に原表皮細胞からメリステモイドを経由して形成される。メリステモイドは気孔の幹細胞的な存在であり、その非対称分裂によりメリステモイド自身とsister細胞が形成される。メリステモイドは孔辺細胞への分化能を維持するが、sister細胞はそれを失う。この非対称分裂を阻害する低分子化合物Bubblinを処理した植物では、メリステモイドの非対称分裂に異常が生じる。本研究ではBubblin の標的因子およびその作用機序を明らかにし、気孔幹細胞の極性形成とその非対称分裂の仕組みの解明を目指した。 1)これまでの解析より、Bubblinを処理しても気孔がクラスター化しないシロイヌナズナ野生型系統としてGa-2株を同定していた。Ga-2株は何らかの遺伝的多型によりBubblin非感受性になっており、Bubblin存在下でもメリステモイドの非対称分裂が正常に行われると考えられる。そこで、Bubblinに対する感受性が異なる2つの野生型系統であるCol-0株(感受性株)とGa-2(非感受性株)を用いて、感受性の違いのもとになる責任遺伝子の同定を試みた。ポジショナルクローニングは難航したが、次世代シーケンス解析により責任遺伝子の候補をいくつか得ることができた。 2)現在までに判明している構造活性相関を考慮し、ナノテクノロジープラットフォームを利用して気孔をクラスター化させる活性を有する新たなBubblin誘導体の合成を試みた。13種類の誘導体を合成したが、ビオチンや蛍光標識物質の修飾に利用できる官能基をもちつつ、活性を維持しているBubblin誘導体は取得できなかった。興味深いことに、合成した誘導体のなかに、Col-0株(Bubblin感受性株)には気孔クラスターを誘導しないが、Ga-2株(Bubblin非感受性株)には気孔クラスターを誘導するものが見つかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は1)Bubblin誘導体の合成とその利用(生化学的アプローチ)、 2)Bubblinの標的因子の同定(遺伝学的アプローチ) 3)Bubblin標的候補因子BRXsの検討 の3つを計画していた。このうち、1)と2)について計画通りに進めることができた。さらに、1)と2)より予想外の興味深い結果が得られた。以上より、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)Bubblin誘導体の合成とその利用。昨年度に引き続き、ナノテクノロジープラットフォームを利用して、気孔クラスター活性を有する新たなBubblin誘導体を合成する。アミノ基など修飾可能な官能基を導入したBubblin誘導体が合成できれば、ビオチン標識等により生化学的に標的因子の同定に利用する。さらに、合成したBubblin誘導体を様々なシロイヌナズナ野生型系統に投与し、気孔クラスター化の有無を調べ、Bubblin誘導体の構造と標的因子の遺伝子多型の相関について検証する。 2)Bubblinの標的遺伝子の同定とその解析。これまでBubblin非感受性のシロイヌナズナ野生型系統Ga-2株を利用して、Bubblin標的遺伝子のポジショナルクローニングを行ってきた。今年度も引き続き、遺伝学的アプローチより標的遺伝子の同定を目指す。標的因子が同定できれば、その立体構造予測よりBubblinとの相互作用の様子を検証する。さらに、標的遺伝子の変異体の表現型解析や標的因子の細胞内局在等を調べ、標的因子の気孔形成における役割について検証する。
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