2018 Fiscal Year Annual Research Report
イネの茎における節幹細胞の特徴づけと細胞未分化性消失機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of pluripotent stem cells underlying plant vitality |
Project/Area Number |
18H04845
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
津田 勝利 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (30756408)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 転写因子 / 分化制御 / 植物発生学 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネ科植物の茎は、節間基部に介在分裂組織(Intercalary meristem: IM)をもち、タケのような劇的な伸長能力をもつ。また、茎は草丈を制御するため育種上重要な標的となってきた。しかし、その成長制御となるIM中の幹細胞に関する研究はこれまで皆無である。本研究では、地上部の主要な分裂組織の維持に不可欠なKNOX転写因子に着目し、IMにおける幹細胞制御機構を解明する。 (1)幹細胞マーカーの探索 まず、イネの節間形成過程の全貌を明らかにすべく、節間成長過程の観察および形態・組織学的特徴づけをおこない、発生ステージ・組織を分類した。この情報をもとに、野生型(T65)、KNOX(d6)およびBLH変異体(ri-/- ril+/-)の発達中の節間をステージングし、トランスクリプトーム解析を行なった結果、IM特異的な発現を示す幹細胞マーカー候補として7遺伝子を抽出した。 (2)KNOX転写因子の細胞内局在制御機構の解明 地上部メリステムの未分化性を維持するKNOX転写因子のタンパク質細胞内局在の詳細な観察の結果、KNOXはメリステム内部では主に核に存在するが、茎などで組織分化が始まると徐々に核外への局在を強めていくことが明らかとなった。イネKNOX転写因子OSH1のdeletion解析の結果、OSH1は少なくとも3つのNuclear export signal(NES)を持ち、そのうち1つはExportin経路を介して制御されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
節間組織のトランスクリプトームによる特徴付けは予定通り完了し、IM特異的な幹細胞マーカー候補を同定するに至った。この中には、他の分裂組織で幹細胞制御を司ることが知られている遺伝子も含まれており、これまで知られていなかった節幹細胞の存在を支持する結果を得ている。KNOX転写因子の細胞内局在制御に関しても、計画通り制御モチーフの同定を完了し、今後この結果をもとに相互作用因子の探索を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)節幹細胞の特徴付けと検証 これまでに同定できた幹細胞マーカー候補の7遺伝子について、IMにおける詳細な発現パターン解析やゲノム編集を用いた変異体の作成・観察をおこなう。発現パターン解析では、まずin situ hybridizationをおこない、mRNAの蓄積パターンを調べたのちに、幹細胞マーカーとして有望なものについては蛍光タンパク質を用いたレポーター系統を作成していく。 (2)KNOXの細胞内局在制御 3つの核外移行モチーフについて、それぞれを欠くコンストラクトを導入した植物体を作成し、発生における重要性を検証する。また、Exportinの関与が示唆されたため、機能欠損変異体や一過的発現抑制系を作成し、OSH1の細胞内局在制御における役割を調べる。さらに、OSH1と相互作用する因子を生化学的に同定するため、培養系を用いた材料からの免疫沈降・質量分析を進める。
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