2018 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子によるヒストン修飾制御を介した幹細胞新生の分子機構
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of pluripotent stem cells underlying plant vitality |
Project/Area Number |
18H04846
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
石川 雅樹 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (00586894)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ヒメツリガネゴケ / 転写因子 / ヒストン修飾 / DNA損傷 / 幹細胞 / リプログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒメツリガネゴケのSTEMIN1転写因子は、茎葉体に発現させるだけで直接の標的遺伝子のヒストンH3K27me3修飾レベルを減少させ、葉細胞を幹細胞へと変化させる。そこで本研究では、STEMIN1によるヒストン修飾変化を誘導する分子機構を解明することで、植物全体の幹細胞新生におけるヒストン修飾変化の作動原理を理解することを目的とする。 STEMIN1を茎葉体に発現誘導させると、標的遺伝子のヒストンH3K27me3修飾変化に加え、ゲノムDNA損傷がおこる可能性が示唆された。またDNA修復系の阻害剤を加えると、STEMIN1による幹細胞誘導が抑制された。これらのことから、STEMIN1によって誘導されるDNA損傷とDNA修復系の活性化が幹細胞誘導に関与しているのではないかと推察された。この仮説を検証するため、本年度では以下の実験を行った。 (1) DNA損傷マーカーとして期待されるリン酸化型ヒストンH2A.Xに対する抗体を作製し、イムノブロットおよび免疫染色実験により、DNA損傷に対する応答性を検出することができた。そこでSTEMIN1を発現誘導した茎葉体から核を抽出し免疫染色を行ったところ、DNA損傷時に観察されるドット状のシグナルが検出された。これらのことから、STEMIN1発現誘導により、DNA損傷が誘導されることが分かった。また、DNA修復に関わる遺伝子を欠失させたSTEMIN1発現誘導株を作製した。 (2) DNA損傷・修復経路以外の可能性として、何らかの因子がSTEMIN1と結合してヒストンH3K27me3修飾変化を引き起こすことが考えられた。そこでSTEMIN1結合因子を探索するため、Mycタグを融合させたSTEMIN1を発現する茎葉体を用いて免疫沈降の条件検討を行い、クロスリンク法を用いた免疫沈降により、STEMIN1を含む沈降産物が得られることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA損傷マーカーとしてのリン酸化ヒストンH2A.Xに対する抗体を用いることで、容易にDNA損傷を検出することが可能となった。さらに、この抗体を用いたChIP-seq解析により、STEMIN1誘導によるDNA損傷部位をゲノムワイドに調べることが可能となった。DNA修復と幹細胞化の関係を調べるため、DNA修復に関わる遺伝子を欠失させたSTEMIN1発現誘導株が作製できたため、次年度にDNA修復と幹細胞化・ヒストンH3K27me3修飾変化の関係を調べることができる。 DNA損傷・修復には依存しないヒストンH3K27me3修飾変化を制御する分子機構の可能性を調べるため、STEMIN1結合因子の探索が不可欠であるが、クロスリンク法を用いた免疫沈降によりSTEMIN1複合体を精製することが可能となり、質量分析装置でSTEMIN1結合因子を同定することが可能になったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、石川が研究全体を統括し、研究協力者とともに実験を行う。また、コンストラクトの作製、形質転換体の維持・管理のため、技術支援員を1名雇用する。
(1) STEMIN1発現誘導におけるDNA損傷と幹細胞化の関係:STEMIN1発現誘導後におこると考えられるDNA損傷とストン修飾変化を調べるため、平成30年度に作製したリン酸化型ヒストンH2A.X 抗体を用いて、STEMIN1を発現誘導した茎葉体から抽出したクロマチンのChIP-seq解析を行い、STEMIN1発現誘導後のDNA損傷を調べる。また、DNA修復系の遺伝子を欠失させた変異体にSTEMIN1を発現させ、STEMIN1標的遺伝子のヒストンH3K27me3修飾レベルの変化、および、DNA損傷の有無をChIP-qPCRで調べる。 (2) STEMIN1結合因子の探索と機能解析:STEMIN1-Myc融合タンパク質を発現する茎葉体をクロスリンクして、Myc抗体を用いて、STEMIN1複合体を精製する。その後、質量分析装置で解析し、STEMIN1複合体に含まれているタンパク質を同定する。得られたアミノ酸配列情報をもとにその因子の機能を推測し、幹細胞化に関わる候補因子を絞り込む。その後、STEMIN1発現誘導株を用いて、候補因子の遺伝子を欠失させ、STEMIN1誘導による幹細胞化、ヒストンH3K27me3修飾変化を調べる。
以上の結果をもとに、STEMIN1、DNA損傷、DNA修復経路、ヒストン修飾の関係を明らかにし、幹細胞化におけるヒストン修飾制御機構を推定する。
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[Journal Article] Single-cell transcriptome analysis of Physcomitrella leaf cells during reprogramming using microcapillary manipulation2019
Author(s)
Minoru Kubo, Tomoaki Nishiyama, Yosuke Tamada, Ryosuke Sano, Masaki Ishikawa, Takashi Murata, Akihiro Imai, Daniel Lang, Taku Demura, Ralf Reski, Mitsuyasu Hasebe
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Journal Title
Nucleic Acids Research
Volume: 47
Pages: 4539~4553
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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