2018 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞におけるゲノムの安定性と可塑性に関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | Principles of pluripotent stem cells underlying plant vitality |
Project/Area Number |
18H04848
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
遠藤 真咲 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (40546371)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | DNA損傷 / 茎頂分裂組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナの茎頂特異的かつ誘導的にDNA損傷を誘導するためのコンストラクトを作成した。DNA損傷の誘導には、Thermus aquaticus由来の制限酵素、TaqIを用いることとした。TaqIは4塩基認識かつ、65℃を至適温度とする制限酵素であり、TaqIを植物体全体で恒常的に発現するコンストラクトを形質転換したシロイヌナズナでは、一過的に高温条件下(24時間、37℃)に置くことでゲノム中にランダムな変異が生じ、それらの変異の一部は、後代に伝わることが報告されている (Muramoto et al. 2018 Nature Com.)。本研究では、茎頂特異的にDNA損傷を誘導し、DNA修復機構の選択性や形態への影響、次世代における変異への伝搬を解析することを目的とし、茎頂特異的ならびに、比較対象として植物体全体でTaqIを発現させる、以下4種類のベクターを作成し、シロイヌナズナに形質転換した。 1) pZK_Pclv3::dMac3*::TaqI::Tclv3、2) pZK_Pclv3:: TaqI::Tclv3, 3) pZK_P35S::dMac3*::TaqI::Thsp、4) pZK_P35S:: TaqI::Thsp *dMac3, OsMac3由来の翻訳エンハンサー (Aoki et al. 2014 Plant Biotechnol.) Floral dip法により1)-4)を形質転換したシロイヌナズナ (Col.)の次世代種子のカナマイシン選抜を行い、外来遺伝子を有する個体の選抜と次世代種子の取得、次世代種子のカナマイシン選抜により、外来遺伝子が1コピーと考えられる系統の選抜を行なった。また、3), 4)については、シスの相同組み換えが生じるとGUSが発現するレポーターを有するシロイヌナズナにも形質転換を行い、こちらも形質転換個体を獲得済み。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初は、二分割したCas9を茎頂分裂組織で会合させ、組織特異的にDNA損傷を誘導する計画を立てていたが、ラパマイシンを利用したCas9タンパク質による変異導入の成果が捗々しくなかったため、TaqIを組織特異的に発現させる方法に変更した。ラパマイシンを用いた系の有効性の確認に数ヶ月を要したため、一旦計画の遅れが生じたが、その後、ベクター作製や形質転換を迅速に行なったため、年次目標は概ね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に作出した植物材料の中から、期待通りのDNA損傷誘導が生じる個体を選抜し、TaqI発現コンストラクトが固定された系統を得る。TaqIの活性化を促す熱処理あり/なしの試験区において、茎頂および葉からRNAを抽出し、DNA損傷や細胞周期制御因子の発現を解析する。また、茎頂分裂組織にDNA損傷が生じることにより、meristem近傍の秩序だった遺伝子発現や、その結果生じる形態的な特徴に変化が生じるかを解析する。本系では、形質転換シロイヌナズナを一過的に高温条件に置くことによりTaqIの活性化を促すため、TaqIによるDNA切断に加えて、37℃ 24時間程度のヒートショックの影響も生じる。両要因の結果を混同しないよう、コントロールの取り方には慎重を期す。
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