2018 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖修飾によるインテグリンの選別輸送ゾーンの制御とその分子機序の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Toward an integrative understanding of functional zones in organelles |
Project/Area Number |
18H04868
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
顧 建国 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (40260369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インテグリン / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物では、翻訳後修飾の一つである糖鎖はその構造的多様性から様々な生物学的プロセス、タンパク質の安定性や輸送、機能などの制御に関与する。一般的に、糖タンパク質は小胞体やゴルジ体のオルガネラにおいて糖鎖で修飾され、適切な場所に運ばれ機能するとよく知られているが、その詳細な分子機序は必ずしも明らかになっていない。本研究では、糖鎖の変化による膜上のインテグリンの局在、挙動および細胞内シグナルの制御を解析し、糖鎖によるインテグリンの選別輸送ゾーンの制御とその分子機序の解明を目指す。複合型のN-型糖鎖生合成に最も重要とされる糖転移酵素N-acetylglucosaminyltransferase1(GnT-I)の欠損により、複合型N-型糖鎖の持たないインテグリンβ1は、機能低下を示し、通常の複合型糖鎖を持つβ1に比べて細胞-ECM間ではなく、細胞-細胞間に多く輸送された(Zhang, et al., FASEB J. 2018)。TGNに多く存在するPI4キナーゼIIαの発現は、インテグリンのシアリル化を制御することが判明した(Isaji, et al., JBC. 2019)。また、O-GlcNAcの修飾が細胞膜近傍の細胞-ECM接着にβ1を介する形成される細胞接着斑の制御に重要であるが明らかになった(Xu, et al., JBC. 2019)。一方、特定なシアル酸転移酵素による糖鎖のシアリル化がインテグリンの輸送制御に関わることを示している(投稿準備中)。現在、それらの分子機序と意義を詳細に解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに細胞の主要な細胞接着分子であるインテグリンや増殖因子受容体であるEGFRやTGF-βRなどのN-型糖鎖付加部位や糖鎖構造に注目し、改変された糖鎖を持つ受容体の機能を重点的に調べてきた。本研究では、初めて糖鎖がインテグリンの機能、局在および選別輸送ゾーンの制御に深く関わることを明らかにした。複合型N-型糖鎖の持たないインテグリンβ1は、野生型β1に比べると機能低下や細胞間に多く局在することを示した(Zhang, et al., FASEB J. 2018)。また、複数のα2,3シアル酸転移酵素の中にある特定なα2,3シアル酸転移酵素が選択的にインテグリンを修飾し、インテグリンの選別輸送ゾーンの制御に深く関わることを明らかにした(投稿準備中)。さらに、その制御は、PI4キナーゼIIαとインテグリンα3の複合体形成が重要であることを明らかにした(Isaji, et al., JBC. 2019)。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果を基づいて、糖鎖によるインテグリンの輸送経路や局在の制御、選別輸送に重要な糖鎖構造の同定を行う。さらに、糖鎖による分子間相互作用と選別輸送との関連性を明らかにする。 1)糖鎖によるインテグリン輸送の制御を可視化するためにRUSHシステムなどを導入する。 2)選別輸送ゾーンにおける重要糖鎖構造の同定およびその意義の検証:輸送先の選別に重要な糖鎖構造と病気の関係を明らかにするため、同定された重要なインテグリンの糖鎖変異体および野生型をN-型分岐糖鎖構造を司るGnT-IIIとGnT-V、や糖鎖末端構造に重要なシアル酸転移酵素とフコース転移酵素Fut8の高発現・欠失細胞株に発現させ、インテグリン輸送先の選別に及ぼす影響と細胞の挙動に及ぼす影響を検討し、選別輸送ゾーンにおける重要糖鎖構造を同定する。 3)糖鎖によるインテグリンを介する分子間複合体形成の制御:インテグリンがどのような分子と複合体を形成しているのか、クロスリンキング法、免疫沈降法やショ糖密度勾配遠心法などと、二次元電気泳動や質量分析などを併用して複合体の構成分子の同定を行う。
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Research Products
(17 results)