2018 Fiscal Year Annual Research Report
代謝特性の違いを基盤とする雌雄生殖細胞の性スペクトラム制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
18H04875
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 陽平 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (00588056)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / 代謝調節 / エピゲノム / 性スペクトラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生殖細胞の代謝調節の性差が性スペクトラムの成立・制御に与える影響とその仕組みを明らかにすることを目的として行った。そのために、[i] 雌雄生殖細胞のメタボローム・プロテオーム統合比較を基に、生殖細胞の代謝調節の性差を特定し、[ii] 着目する代謝系の制御が雌雄の性分化や配偶子の形成に与える影響とその仕組みを明らかにする、という研究計画で遂行した。 代表者は、2018年度に、まず性的に分化して間もない雌雄始原生殖細胞のメタボローム・プロテオーム比較解析を行い、性差のある代謝調節系の特定を試みた。その結果、オス生殖細胞ではセリン、グリシン、メチオニンの代謝を中心としたOne carbon metabolismが特に活性化している一方、メス生殖細胞ではピルビン酸代謝や脂質代謝が亢進していることを見出した。さらに分化の進んだ胎齢後期の雌雄生殖細胞を用いたメタボローム・プロテオーム統合解析により、雌雄それぞれの生殖細胞分化の過程での代謝変化を包括的に記述することに成功した。 これらの代謝系の生殖細胞分化における意義を見出すために、着目する代謝系の阻害剤を添加した際の精巣・卵巣器官培養における生殖細胞分化への影響を検証した結果、精巣におけるセリン代謝阻害、卵巣におけるピルビン酸代謝阻害で顕著な生殖細胞分化への影響を認めた。今後の展望として、これらの代謝撹乱条件で培養した生殖細胞のエピゲノム・トランスクリプトーム解析を行い、各代謝系がエピゲノム制御とのクロストークを介して遺伝子発現を調節する仕組みに迫る。さらに、生殖細胞特異的ノックアウトマウスを用いた代謝撹乱による、生体内での配偶子形成への影響を調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定では、2018年度には、(i) 雌雄生殖細胞のメタボローム・プロテオーム統合比較を基に、生殖細胞の代謝調節の性差を特定することを目標としていた。実際には(i)の研究を達成するとともに、特徴的な性差のある代謝系が実際の雌雄生殖細胞分化に影響を与えるかどうかを、精巣・卵巣を用いた器官培養により明らかにすることに成功し、[ii] 着目する代謝系の制御が雌雄の性分化や配偶子の形成に与える影響とその仕組みを明らかにする、という今後の研究計画の一端にも着手できたことから、当初予定以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、雌雄生殖細胞に特徴的な代謝系を撹乱した条件で培養した生殖細胞のトランスクリプトーム解析を行い、特に発現量が上昇・低下する遺伝子群の特定を行うこと、それらの遺伝子発現に影響を与えうるエピゲノム修飾の特定を行うことを予定している。さらに、生殖細胞特異的ノックアウトマウスを用いた代謝撹乱による、生体内での配偶子形成への影響を調べるとともに、代謝-エピゲノムクロストークのより詳細なメカニズムの解明に取り組み、代謝調節が生殖細胞の性差の形成や性特異的な分化に関わる分子メカニズムを明らかにしていく。
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