2018 Fiscal Year Annual Research Report
環境応答により雌雄を産み分けるミジンコの性スペクトラム
Publicly Offered Research
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
18H04884
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 泰彦 大阪大学, 工学研究科, 講師 (60415932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | オオミジンコ / 性スペクトラム / ダブルセックス遺伝子 / エピゲノム / 共生菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環境ストレスによりメスと遺伝的に同一のオスを生む甲殻類オオミジンコで間性が生じるメカニズムを解析し、遺伝的要因、エピジェネティックな要因、環境要因がどのように性スペクトラムの位置を変えるか、また互いにどのように相互作用してるのかを明らかにする。遺伝的な要因の解析では、オス化の程度が異なる2つの変異体を用いて、RNA-Seq 解析により性スペクトラム上の位置がオスからメスへと変わる過程で変動する遺伝子群を見出した。また、先進ゲノム支援に支援いただき、赤色蛍光によりDsx1発現を可視化できるDsx1レポーター個体を用いて、C1-CAGEによるシングルセルレベルでのトランスクリプトーム解析を行った。エピジェネティックな要因の解析では、進化的に保存された複数のエピジェネティック制御因子の発現解析を行い、Dsx1 遺伝子座のエピゲノムを修飾していると考えられる遺伝子を複数見出し、ノックダウンや過剰発現などの遺伝子機能解析を開始した。一方で、雌雄の微生物群集の変化を PCR 後の電気泳動でのバンドパターンの変化により簡便に調べることができるリボソーム遺伝子間スペーサー解析により調べた。その結果、雌雄で共生微生物が異なることを示唆する結果を得た。これらは、性スペクトラム上の位置決定の主要な遺伝的要因であるダブルセックス遺伝子とエピジェネティックな要因、環境要因の共生菌が相互作用している可能性を示唆する結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性スペクトラム上の位置決定の遺伝的要因である Dsx1 変異体を利用した RNA-Seq、Dsx1発現細胞のC1-CAGE解析を行い、性スペクトラムを制御する遺伝子ネットワークを解明するための基盤が整った。また、エピジェネティックにDsx1を制御する遺伝子の候補を見いだすことができた。これらに加え、環境要因として共生菌が性スペクトラムの形成に関与している可能性を明らかにできたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った RNA-Seq解析、C1-CAGEによるトランスクリプトーム解析のデータから、性スペクトラムを制御する遺伝子ネットワークを明らかにする。また、Dsx1のエピゲノムを制御していると予想される遺伝子のノックアウト等を行い、Dsx1発現、オスの形質、そして細菌叢に与える影響を調べる。一方で、共生菌の解析においては、次世代シーケンスを用いて性と関連する共生菌を同定するとともに、無菌個体にこれらを接種した時の個体の性スペクトラムの変化、Dsx1発現、そしてエピゲノムの変化を解析し、各要因の相互作用を解明する。以上の解析に加えて、我々が最近見出したDsx1を活性化する長鎖ノンコーディングRNAがどのように性スペクトラム上の位置決定に関与するかについても解析する予定である。
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Research Products
(17 results)