2018 Fiscal Year Annual Research Report
The roles of Y chromosome genes in sex spectrum
Publicly Offered Research
Project Area | Spectrum of the Sex: a continuity of phenotypes between female and male |
Project/Area Number |
18H04891
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
的場 章悟 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (20585202)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 性スペクトラム / Y染色体上遺伝子 / CRISPR |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類の雌雄(男女)は体のサイズをはじめとして、一見して容姿で見分けられるほど様々な部位で異なる表現型を示す。この表現型の違いはほとんどがY染色体の有無によって決定されている。主にY染色体上にあるSry遺伝子が精巣分化を誘導することで、精巣からのホルモン分泌を起点とする全身レベルでのドミノ倒し的な雄への分化が引き起こされる。それでは、Sry以外のY染色体上の遺伝子は一体どのような機能を持っているのだろうか? 性スペクトラムへ影響するのだろうか? そこで本研究では、Y染色体上の様々な遺伝子についてTriple CRISPR法を用いてノックアウトマウスを作出し、それらの性的表現型を理研BRCの表現型解析パイプラインに乗せることで、網羅的かつ定量的に解析することで、各器官レベルでの性スペクトラムにどの程度Y染色体上遺伝子が関わるかを網羅的かつ定量的に明らかにすることを目的としている。 初年度はY染色体上のターゲット可能な遺伝子を10 個にまで絞り込み、それぞれの遺伝子に対して効果的なsgRNAをデザイン・機能評価したうえでTriple CRISPR法によってマウスを作出した。いずれの遺伝子についてもマウスの作出効率に大きな差は無かったことから、これらのTriple CRISPRが発生に悪影響を与えていないことを確認した。一方で、一部のノックアウトマウスでは、生殖細胞の発生・機能に異常が起きることも発見した。現在、こうして作製したファウンダーマウスは順次、表現型解析パイプラインに乗せて解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、計画していた通り、初年度でY染色体上のユニークな遺伝子10個を候補因子として絞り込み、全てに対して効果的なsgRNAのデザイン・合成に成功した。これらのsgRNAを用いてTriple CRISPR法によってノックアウトマウスを作出した結果、発生効率自体には大きな影響はなかった一方で、生殖細胞の発生に影響を与える因子も存在していた。 上記のようにして作製したファウンダーマウスについて、全身でどのような性スペクトラム上の表現型を示すかを把握するため、理研BRCの日本マウスクリニックにある表現型解析パイプラインに乗せて解析を開始した。本パイプラインでは、離乳前から生後26週にわたって、経時的に代謝、血液、骨/骨格、癌、循環器、感覚器、皮膚/被毛、神経/行動といった多領域にわたる検査項目を網羅的かつ定量的に解析する。具体的には、8週齢で可視的検査(Modified SHIRPA)、9週齢で血算検査、10週齢で尿検査、11週齢で血液生化学検査、13週齢での聴覚検査、14週齢でブドウ糖負荷試験、18週齢でアディポサイトカイン、血清生化学(糖・脂質系)検査、19週齢で眼底検査、22週齢でX線検査および骨密度・体脂肪検査、24週齢で心電図検査、26週齢でFACS検査、最終的に26週齢で剖検を行う。既にC57BL/6J系統について標準的な数値は全ての項目で得られているが、本実験ではコントロール群もIVFおよび胚移植を経るため、通常の交配ラインとは表現型が多少異なることが想定される。そのため、本実験で用意したコントロールマウスの雌雄を同じパイプラインに流すことで、基本的な性スペクトラム上の両極の表現型を正確に把握することができる。各実験群について7~10個体をパイプラインに流していく予定である。最終的に、各項目についてTriple CRISPRのファウンダーが、性スペクトラム上のどの位置にいるかを定量的に決定する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、引き続きファウンダーマウスのパイプライン解析を続け、10個の遺伝子について、それぞれ最低7匹のマウスを解析する予定である。現時点では3遺伝子を解析中であり、4月中にパイプライン解析用のマウス作出を完了する予定である。表現型の得られたY染色体遺伝子のノックアウトマウスについて、繁殖可能であればファウンダーの中から完全な遺伝子欠失ラインを確立する。これまでの他の遺伝子の解析経験から、ファウンダー中に10~20%程度の割合で3つのsgRNAでターゲットした領域を丸ごと欠失したマウスが生まれている。ただし、多くのY染色体上遺伝子は精子発生での機能が示唆されているため、精子発生異常をきたす可能性が高い。もし精子形成異常で繁殖不能な場合は、ファウンダーの中からシークエンスにより対象遺伝子の機能が最も明確に阻害されている個体を選ぶ。その上で表現型の見られた器官について、RNAシーケンシングによって遺伝子発現の網羅的解析をし、対象遺伝子および他の下流遺伝子ネットワークの変化を理解する。さらに目的遺伝子のコードするタンパク質の種類に応じて詳細な生化学的解析などを行うことで、対象遺伝子が標的器官でどのように機能しているかを分子レベルで解析する。
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Research Products
(12 results)