2018 Fiscal Year Annual Research Report
Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding
Publicly Offered Research
Project Area | Conquering cancer through neo-dimensional systems understanding |
Project/Area Number |
18H04897
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大澤 毅 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (50567592)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | がん微小環境 / 細胞文脈 / オミクス統合解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新学術領域「システムがん」で培った腫瘍微小環境におけるオミクス統合解析を発展させ、「細胞文脈」から癌悪性化の俯瞰的な理解と攻略を目指す。本研究で申請者らは、トランスクリプトーム、ゲノム、エピゲノムに加え、(1)メタボローム、リピドーム、リン酸化プロテオームのオミクス統合数理ネットワークモデルを構築し、(2)腫瘍微小環境のシステム的統合理解をスーパーコンピューター(ドライ)と分子生物学的手法(ウエット)の超融合から実現し、(3)臨床検体に応用することで、システムがんの新次元俯瞰と攻略を目指し研究を行った。 本年度は、(1)「細胞文脈」による癌悪性化機構の解明と、(2)「細胞文脈」のシステム的統合理解の研究を行った。 (1)「細胞文脈」におけるエピゲノム・転写の解明:本研究では腫瘍微小環境という「細胞文脈」において、mRNA-Seq 、ChIP-seqを行いアクティブ領域(H3K4me3)、サイレント領域(H3K27me3)や、オープンクロマチン領域(Faire-Seq)などを特定し、低酸素・低栄養・低pHで重要なエピゲノム変化と転写因子を同定し、「細胞文脈」によるがん悪性化の解明を試みた。本研究から、低酸素・低栄養・低pHやその組み合わせでがんの浸潤・転移・薬剤耐性などのがん悪性化に関わる新たなエピゲノム・転写機構を解明しつつある。また、(2)「細胞文脈」のシステム的統合理解:申請者は連携研究者と共同で、エピゲノム、トランスクリプトーム、インタラクトーム、メタボロームのオミクス統合解析を開発し、低酸素・低栄養の癌細胞は、解糖系に依存せず、脂質分解系が細胞生存に寄与し、細胞膜構成要素の代謝物ががん細胞内で最も蓄積する代謝物であることを見出し、さらに、その経路がアミノ酸代謝経路によって制御されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況として、概ね順調に進展している。 本年度は、(1)「細胞文脈」による癌悪性化機構の解明と、(2)「細胞文脈」のシステム的統合理解の研究を行った。 (1)「細胞文脈」におけるエピゲノム・転写の解明:本研究では腫瘍微小環境という「細胞文脈」において、mRNA-Seq 、ChIP-seqを行いアクティブ領域(H3K4me3)、サイレント領域(H3K27me3)や、オープンクロマチン領域(Faire-Seq)などを特定し、低酸素・低栄養・低pHで重要なエピゲノム変化と転写因子を同定するなど、「細胞文脈」によるがん悪性化の解明を試み新たな転写・エピゲノム制御機構の知見を得た。また、低酸素・低栄養・低pHやその組み合わせでがんの浸潤・転移・薬剤耐性などのがん悪性化に関わる新たなエピゲノム・転写機構を解明しつつある。また、(2)「細胞文脈」のシステム的統合理解:申請者は連携研究者と共同で、エピゲノム、トランスクリプトーム、インタラクトーム、メタボロームのオミクス統合解析を開発し、低酸素・低栄養の癌細胞で亢進する代謝経路やがん細胞内で蓄積するがん代謝物候補を見出し、さらに、その経路が1つがアミノ酸代謝経路によって制御されることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、概ね順調に進展していることから、平成31年度は当初の計画どおり (1)がん悪性化と「進化と多様性」を規定する「細胞行間」の解読と(2)腫瘍微小環境における非コード長鎖RNAのがん悪性化機構の検討を行う予定である。(1)がん悪性化と「進化と多様性」を規定する「細胞行間」の解読は、近年、ヒトゲノムからタンパク質をコードしない長鎖非コードRNA(LncRNA)が多く転写され、がんの悪性化に寄与することが報告されているが、RNA-Seqから網羅的にlncRNAの転写を定量する方法を開発し、lncRNAの網羅的発現データを用いた「細胞文脈と行間」の統合的な解析から、がん悪性化における影響の検討を行う。具体的には「細胞文脈」に応じて依存的に発現亢進するlncRNAsを系統的に阻害する独自のgRNAライブラリーなどを構築して、がん細胞の増殖・転移能に与える影響をin vitro細胞系やマウス腫瘍実験系で検討する。 (2)腫瘍微小環境における非コード領域のがん悪性化機構の検討:LncRNAの解析に加え、タンパク質非コードゲノム領域には、遺伝子発現をエピジェネテックに制御するH3K27Acのヒストンマークを伴うエンハンサーやスーパーエンハンサー領域が存在する。申請者は(1)遺伝子発現、(2)H3K27Acのヒストンマークと③クロマチン相互作用データを統合し、腫瘍微小環境における非コード領域のがん悪性化機構の解明を行う。具体的には、低pHや低栄養でがん悪性化に寄与する律速代謝酵素が遠隔クロマチンの相互作用によってエピジェネチックな発現制御機構を解明する。
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[Journal Article] Regnase-1-mediated post-transcriptional regulation is essential for hematopoietic stem and progenitor cell homeostasis2019
Author(s)
Kidoya H, Muramatsu F, Shimamura T, Jia W, Satoh T, Hayashi Y, Naito H, Kunisaki Y, Arai F, Seki M, Suzuki Y, Osawa T, Akira S., Takakura N.
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Journal Title
Nature Commun,
Volume: 10
Pages: 1072
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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